UPDATE: 02.17 / NEXT: 02.24


山﨑まなみのこだわり



-矛盾した感覚-


私の卒業制作のテーマは「恥ずかしさを隠して伝える」こと。

日頃から気付いた事をメモしたり、考えていることを文字に書き起こすと、頭の中が整理されてスッキリする。

しかし、そこには「考えたことを他人に伝えたい」という想いと同時に「他人に見せたい様な見せたくない様な恥ずかしさ」が生じる。

この1つの行動から生まれる2つの矛盾した感覚や経験に興味があり、今回のテーマに辿り着いた。

特に日記やブログは恥ずかしさのあまり鍵をかけたり、消してしまうことすらある。しかし、それらの内容を読み返すと過去の自分に発見があり、今は恥ずかしくてもその時にしかない大切な感覚が存在すると感じた。

そのことから文字に起こした時に生じる恥ずかしさを隠しつつ、他人に伝えることができる機会をつくりたいと思い制作に至った。





-読めない文字-


制作した「shining mirror font」は近づいたり時間をかけないと読めない、興味を持って読もうと意識した人にしか読めないモーションフォントである。

文面には自分の思考が映し出されることからモチーフとして鏡を選び、1つ1つのパーツに動きを付け、キラキラとした動きや質感、見せたい様な見せたくない様なもどかしさを表現した。

フォントが「何を」隠しているのかが伝わるものにしたかった為、フォントの使用例を共感してもらいやすい、テーマの元にもなった日記にした。

また、コンセプトが伝わるように実際にタイピング体験ができるものも制作した。自分自身を見つめるきっかけになってほしいという想いから、このタイピングにはディスプレイに自分自身が写り込む仕掛けを施した。





-私にとっての恥ずかしさ-


私にとっての恥ずかしさは「自分の思考が晒されること」

この恥ずかしさを敢えて隠すことで表現したかったのは「伝えたり残したりする機会を増やしたい」と感じたからだ。

それが最も突き詰めたかったことではないかと感じている。

自分が何を表現し、何を伝えたいのか、それが上手くかたちにも言葉にも出来ず、もがき苦しんだ時期もあった。しかし、長い時間をかけてじっくり向き合える卒業制作だからこそ「かたちにすることで言葉にできた」という経験が得られたのだと感じている。

自分の思考をかたちにして表現することは恥ずかしい時もある。(このこだわりを文章化するのも、どうしようもなく恥ずかしかった。)表現することで他人に何かを伝えたい私たちにはとても身近な存在である恥ずかしさ。だからこそ越えなければならない感覚であると卒業制作を通して改めて感じた。