UPDATE: 01.20 / NEXT: 01.27


藤元翔平のこだわり



-不規則-


今回の僕の卒業制作のテーマは「不規則」。まず不規則というテーマにした動機だが、木漏れ日や雨の水滴、風の音などの自然界に存在するものに対して、視聴覚的に不規則、ずれを感じたことから始まった。最初は自然の中に存在する不規則ではなく、認知的に不規則を感じ取れる物体、または空間をつくろうと考えていた。

そこから、不規則なものとは、規則的な何かが前提にあり、それを認識できるからこそ不規則を感じ取れる。そういった概念を表現すれば、違和感や不安感を与えることができるのではという考えに至った。違和感や不安感、または不思議な感覚、もしくはよく分からないもどかしい感覚を作品を通して見る人に与えたいと思うようになった。





-自然さ-


今回の作品ししおどしデバイス「しっし」では違和感や不安感、または不思議な感覚を与えるために自然に水を流した状態と同じ挙動をとるように制御している。デバイスに実際に水を流し、ししおどしの傾きを検証した。

しっしは水を必要とせず、自身で傾き、重力によって落下し、音を鳴らす挙動をとる。その挙動は自然に水を流した状態と変わらない。また、傾きには毎回僅かに誤差が生じるように制御している。その誤差がよりデバイスに自然さを生むのではと考える。そうすることで、見る人に人工物と自然物の境界線を曖昧にしてもらい、「人工物の自然さ」というものを感じ取ってもらえるのではと考えている。





-自然界のゆらぎ-


今回はししおどしという既存にあるものにアプローチして、ししおどしデバイスを制作し、自然さを取り入れたわけだが、自然界の不規則というのは、それぞれが連続的であり、曖昧で、絶妙な関係性があるのではないかと考えている。木漏れ日や雨の水滴、風の音など、偶発的に生まれる僅かな誤差を五感で感じ、美しいと感じるのはなぜなのか。その美しいと思える感覚や、生き物のゆらぎをデバイスに取り入れることを今回の制作では大切にした。