UPDATE: 02.03 / NEXT: 02.10


森石健一のこだわり



-始まり-


私が卒業研究制作のテーマとして選んだのは『眠っている間に見る夢の話を共有する』というものだ。なぜ私がこのようなことを制作のテーマとして選んだのか?そのきっかけを最初に話をしておきたい。

私は大学に入学してから夢日記をつけていた。大学四年生になるまで、その今までつけていた夢日記を読み返した事はなく、ただ記録としてつけていた。しかし、卒業制作のテーマを決めるときに自分の興味のあることを探していたときにその夢日記を一から読み返すことを初めてした。読んでいくと自分の知らなかった自分に出会う事ができたし、そのときの自分の精神状態がどのようだったのか、話の内容や登場人物から推測するとよく分かった。

もしこの夢日記を他の人とおもしろおかしく共有することができたのなら初対面の人でもその人がどんな人なのか分かるのではないか?また、今まで仲の良い友達とも更に仲良くなるきっかけになるのではないか?と思い、制作が始まった。





-意識と潜在意識-


制作を行なう上でまず、自分の夢日記の分析から始めた。夢日記を読み返すと楽しい夢の記録はほとんど存在しなかった。よく自分の夢に現れるのは旧小学校の校舎だ。いつも自分のいる場所は決まっていて、それは一階からニ階へ続く階段の踊り場だ。そこで一階の廊下から来る黒い何かに脅えている話だ。そんな何かに対する不安や不満、恐れが鮮明に現れた夢の話ばかりだった。

自分の夢はそのような内容の夢ばかりで他者もそれは同じなのか?そうではないのか?とリサーチを行なう事にした。リサーチを行なった結果、その人の趣味や気になっている事が夢の話には反映されていることが分かった。また、幼い頃の思い出が今でも潜在意識として残りそれを土台に夢が構成されている人もいた。そんなその人ならではの夢の話は私にとって興味深かったし、とても魅力的だった。これはその人の声で聴かされたときに初めて意味を持つ様な気がし、夢を見た本人の音声を作品に使用することにした。





-アウトプット-


夢の話をその夢を見た本人に語ってもらうことまでは決定し、次に夢を共有するためのデバイスをどうすれば良いか悩んでいた。頭に被るものが良いのか?それとも体がすっぽり入ってしまう様なものが良いのか?制作者側からするとより自然な作品形態が望ましいと思っていたのだが、なかなかしっくり来るアイデアが浮かんで来なかった。浮かばないままアイデアスケッチを描き進めているときに、夢に出てきて欲しい物を枕の下に挟むとその夢が見られるという迷信を思い出した。もし枕から何か夢に関する情報を取得できるようできたら作品への導入として自然なのではないか?と思い、作品のデバイスは枕が相応しいという結論に達した。