2D造形
食べ物をひとつ定めて、あなたがその食べ物に感じている魅力を、紙面と映像を通じて伝えてください。紙面の仕上がりはB4サイズ縦とします。そこにタイトル、数百字の文章、イラストレーションをレイアウトして表現してください。映像は5〜15秒のサイレントアニメーションで表現してください。
垂らす。
小木 柊太
今回の課題は食べ物をテーマにした平面作品ということで私ははちみつをテーマに描きました。はちみつは他の食べ物には見られない特性を多くもっており、それが視覚的表現の豊かさにつながると思いこのテーマを選びました。
選抜コメント
紙面では、フォトリアルでボリュームのあるイラストレーションに目を奪われます。また、「垂らす。」という潔いタイトルに加え、荘厳とも言える文章表現から、ハチミツが制作者にとってこの上なく贅沢であることが伝わってきます。映像では、粘度のあるハチミツが、ゆっくりと垂れる様子をよく観察できています。演出面では焦らしによるシズル感を出すことに成功しており、注目してほしい部分に視線を誘導するカット割りも秀逸です。
担当教員：高見真平／三沢紫乃
カップの中、愛のあったかさ
YU JIYUN
子供の頃、母が私の体調が悪いときや気分が良くないときに作ってくれた、ハチミツ柚子茶をテーマにポスターとアニメーションを制作しました。温かく、ふわふわした雰囲気を出すために、柔らかい色合いと湯気のような表現を用いました。
選抜コメント
紙面では、全体に及ぶグラデーションと点描を伴った柔らかい色味が、滋味深さを感じさせます。文字色と背景色のコントラストを、文章が読めるギリギリまで抑えたことも雰囲気づくりに効いています。映像では、一見すると淡々とした構成の映像ですが、テンポや間の取り方が繊細に設計されています。はちみつゆず茶が手渡されるカットでは、風邪を引いた子どもと、それを気遣う母の会話が聞こえてきそうです。
担当教員：高見真平／三沢紫乃
インフォメーションスケッチング
日常の中に流れる「時間」をテーマに、自分の体験をもとにしたインフォメーションスケッチを制作します。時間は目に見えませんが、私たちの行動や感情の変化を通じて感じ取ることができます。その見えない時間の質を、観察・記録・構成のプロセスを通して視覚化してみましょう。体験を段階ごとに分け、出来事・思考・感情を描き出すことで、時間のリズムや密度を表現します。完成作品は壁に展示し、体験の共有を通じて「時間を描く」という新しいデザインの可能性を探ります。
文化祭の一日を可視化する試み
稲葉 健秀朗
文化祭という忙しい時間をテーマに、形の無い「時間」の視覚化に挑戦。 漫画の吹き出し・視線誘導・腕時計をタイムキーパーとして配置し、時間の流れが自然と理解できるような構成を練った。 漫画の吹き出し・視線誘導・腕時計をタイムキーパーとして配置し、時間の流れが自然と理解できるような構成を練った。
選抜コメント
時間という抽象的な概念を、連続する出来事の描写でとらえた秀作です。文化祭準備という限られた期間の熱量が、画面の密度や線の勢いに表れています。写真や映像ではすくい取れない「流れる時間の質感」を、観察と構成によって可視化している点が優れています。描くことが、記録であり体験です。
担当教員：清水淳子
梅雨の行き当たり
小宅美音
雨が降ったり、お店が閉まっていたり、思いがけない出会いがあったり。予定通りにいかない日こそ面白い。そんな紆余曲折な一日をレイヤー構造でスケッチしました。感情・時間・出来事の順に重ね、1日の情報の奥行きを与えられるよう工夫しました。トレーシングペーパーを使い梅雨特有の湿った空気感を表現し、透け感やカットの仕方で見える情報の量を調整しています。
選抜コメント
梅雨という曖昧な季節の体験を、時間の層として可視化した作品です。三層構成によって、雨の強弱や空気の変化が丁寧に表現されています。場所・時間・感覚が交錯し、見る者も体験の中に引き込まれる。観察の積み重ねによって時間の湿度を表現しました。
担当教員：清水淳子
プログラミング基礎
p5.jsを使って新しい本学科のロゴを企画・制作してください。同時代に要請される、形を単一に定めず動的に振る舞うパターンやロゴ、造形原理自体が主題となっているデザイン提案など、ダイナミックアイデンティティを参照領域とします。p5.js形式のロゴは共有サイトにアップロードし、デザインシステムについての説明をA4サイズで掲示します。
TAU idd: logo design system
青木亮太朗
多摩美術大学のロゴを踏襲した2つのロゴと、情報デザインに関連したテキストがグリッド上でランダムに切り替わるシステムを制作しました。 常に新しいビジュアルが生成され続けるさまは、テクノロジーとデザインを駆使して新しいモノを作ってゆく情報デザイン学科を表しています。
選抜コメント
多摩美術大学のユニバーシティ・アイデンティティと、切り分けた文字要素をランダムにグリッド内に配置し、同一性を保ちながら変化し続ける様子を「多様な分野を学び、テクノロジーとデザインを駆使して新しいモノを作ってゆく情報デザイン学科の特徴」として端的に表現できており、基礎的なデザイン原理に骨太に着地しています。
担当教員：永松歩／高橋裕之
「情」
YU JIYUN
「情」という漢字から着想を得て、人と人をつなぐ情報と関係性を可視化しました。ピクセルと流れる点の動きによって、コミュニケーションの流れや情報技術を表現しています。画面をクリックすると人々の姿が変化し、常に新しい関係が生まれるインタラクティブな作品です。
選抜コメント
人をいくつかの四角形でシンプルに表現しつつ多様性を与えています。それらが巨視的な目線でネットワークとして連結され、互いに情報が交換されている様子が表現されています。乱数による個性の表現と多様なつながりを広大なパターンとして提示しており、プログラミングで可能な特徴的表現と本学に対するイメージがよく接続されています。
担当教員：永松歩／高橋裕之
マークアップ言語
架空のコンテンツ（映画・小説・漫画・ゲーム）を想定し、そのプロモーションページを作成して下さい。なお、架空のコンテンツはオリジナルのものを企画設計すること、画像や写真は自作のものを主に用いることを条件とします。制作期間は2週間とし、講師との個別指導や学生同士のレビューを通して、作品の完成を目指します。
恋する定食学園
長嶺美弓
架空のWebページを作成するという課題の作品です。私は主人公のご飯ちゃんが、おかず達と恋愛する「恋する定食学園」という架空の恋愛ゲームのWebページを作りました。
選抜コメント
選ばれしおかずしか入学できない「定食学園」に、運良く入学を果たしたご飯ちゃん（＝あなた）を主人公とする恋愛（？）ゲームのプロモーションページです。ユニークかつ秀逸なテーマ設定により、予測不能な世界観が閲覧者の興味を強く引きつけます。ストーリーやキャラクターも丁寧に作り込まれており、随所にクスリと笑える仕掛けが散りばめられています。作品の魅力が余すところなく伝わる、完成度の高い作品になっています。
担当教員：鈴木健司／楠房子
STAR VOYAGE
山田明依
輝く銀河とネオンが交差する。時代遅れで最先端な宇宙へようこそ。こちらはチープで心躍るレトロフューチャーなSF映画公式風サイトです。CASTページでは、イラストをクリックして俳優たちの物語を覗けます。
選抜コメント
宇宙で遭難した主人公が、奇想天外な惑星を次々に巡りながら地球を目指す。そんなSF映画のプロモーションページです。アメコミ風のイラストが非常に印象的で、ロゴデザインも作品の方向性を的確に演出しています。コンテンツとビジュアルの構成は緻密に組み立てられており、アニメーションやインタラクションも効果的に活用されています。ページ全体を通して、こだわり抜かれた世界観を存分に感じさせてくれる作品です。
担当教員：鈴木健司／楠房子
エクスペリエンスデザイン
「楽しい経験をデザインする」ことを目標に、グループで自由な発想によってやってみたいイベントのデザインをおこないます。Workshop1では、デザインした出来事を伝えるためのパンフレットのデザインを制作していきます。Workshop2では、Workshop1のアイデアをより現実的にデザインを展開していきます。デザイン展開では、企画したイベントを実践してみて、そこで発見したことからリデザインを繰り返し完成度を高めていきます。最終的にはデザインしたイベントに関連したツール・アプリ・ポスター・紹介ビデオ等をグループごとで制作していきます。
Get to know!
鎌田陽香/塩澤江麻/名和美優/鈴木友菜/早野綾音/池田珠緒/淡路屋未来/山川怜子
『Get to know!』は人と人とのつながりを増やすイベントです。お題への答えを花びらのカードに書き、花壇柄のシートに並べその内容を話し合ってもらいます。皆で会話に花を咲かせ、最後にはオリジナルの花壇が完成します。
選抜コメント
参加者の間で楽しい対話が生まれるたびに、花びらが花壇のシート上に重なり広がっていきます。この経験デザインは、友人とのコミュニケーションの広がりや、参加者同士が親しくなる機会を自然に生み出します。さらに、適切なメタファーを用いることで、参加者同士の関係性の変化が目の前で可視化され、その場全体の雰囲気が豊かに演出されます。こうした工夫によって、デザインされたワークショップの魅力は一層引き立てられます。
担当教員：植村朋弘／池田拓司
PIRATES of the TAMABBEAN
石川 美南/加藤 陽/狩野 あおい/佐藤 優心/鈴木 音乃/三嶽 菜乃
多摩美初心者の新入生に多摩美に関するクイズを解いてもらったり、グループで宝を探しに校内を回ってもらうことで新入生同士の絆を深めたり、大学生活に必要な知識を培ってもらう「宝探し×クイズ」の校内探検イベントです
選抜コメント
デザインされたワークショップには、遊びと学びがバランスよく組み込まれています。参加者である情報デザイン学科の新入生は生活空間を探検することで、将来の学びや活動の土台となる経験を積むことができます。航海・探検・宝探しのメタファーを巧みに組み込み、参加者は各グループごとに独自の物語（エピソード）を創り出します。さらに、ゲームを通じてグループの親睦を深める経験が連続して展開される点も高く評価されます。
担当教員：植村朋弘／池田拓司
インフォグラフィックス基礎
ナラティブな地図あなた自身による観察や体験から得られた情報にもとづいた、多摩美術大学の地図を制作してください。ナビゲーションに留まらない、地図というメディアの可能性を拡げる実験的な作品を期待します。
TAMAPeeking
今井凛/鈴木音乃
自分は多摩美の他学科のことを思ったより何も知らない。この学科はどんなことをしているのだろう？と、学校内を散策し、覗き見する私たちの視点を追体験することのできるインタラクティブマップを制作。
選抜コメント
「Peeking」には盗み見るというニュアンスがあります。いろんな学科の様子を、制作者のふたりはきっとドキドキしながら実際に盗み見たのでしょう。公衆の面前で、屈んで、持ち上げて、覗くという動作を鑑賞者に強いるこの地図からは、制作者のふたりが感じた各学科の印象に加え、その際にドキドキした感覚も伝わってきます。このような感覚も伝えるべき情報だと捉えてデザインされた、まさに「ナラティブな地図」です
担当教員：高見真平／宮崎光弘
タマビホール
中尾愛
普段、足元にある「穴」の存在を意識したことはありますか？この地図には、多摩美術大学にある計1035個のマンホールとハンドホールの種類、位置を記しています。普段は目立たない彼らが主役になるようにデザインしました。
選抜コメント
人が集まるホールではなく、マンホール（人が入れる大きさの穴）と、ハンドホール（手が入る大きさの穴）の場所が記された八王子キャンパスの地図です。江戸時代に日本中を測量してまわった伊能忠敬のように、ひとつずつ見て回って書き記すことでつくられた労作です。地図制作には、膨大な作業量と、最後までやりきる根気や情熱が必要ですが、それを思い出させてくれるこの地図もやはり「ナラティブな地図」だと言えます。
担当教員：高見真平／宮崎光弘
構造設計
「◯◯を楽しませる」をテーマにWebページを作成して下さい。なお、インタラクティブに表現すること、画像や写真の素材は自作のものとすること、音声はフリー素材を使用してもよいことを条件とします。制作期間は2週間とし、講師との個別指導や学生同士のレビューを通して、作品の完成を目指します。
おにぎり工場
名和美優
その日の気分によってオリジナルのおにぎりを作るWebサイトです。ついついマンネリ化してしまいがちなおにぎり。味付け・具・トッピングを選んで、今までにないおにぎりに出会うことができます。
選抜コメント
おにぎりのさまざまなトッピングを試して楽しむコンテンツです。バラエティ豊かな具材が可愛らしく描かれており、思わずいろいろな組み合わせを試したくなります。今の気分に合わせて具材が変化する仕掛けが施されており、選択時の心理的負担を上手に軽減しながら、いつもの定番から見たことのないトッピングまで、様々なおにぎりとの出会いを存分に味わえる作品です
担当教員：鈴木健司／落合健太郎
Wonder Island
松本理世
ここはワンダーアイランド。見たことのない景色が息づく場所。日常を脱ぎ捨て、風の導くまま歩き、心が揺れた景色をフィルムに刻もう。
選抜コメント
不思議な島の風景を撮影して楽しむコンテンツです。幾何学的なオブジェクトが淡いグラデーションで彩られ、有機的かつ無機的なアニメーションと組み合わさることで、独創的な世界観が構築されています。島はいくつかのエリアに分かれており、それぞれで異なる特色ある景色が広がります。カメラを片手に、不思議な世界を旅するような体験を味わわせてくれます。
担当教員：鈴木健司／落合健太郎
フィジカルプログラミング
記憶に残る1日、空想上の1日、アリの1日など、自由な「ある1日」を設定し、その「光」の変化をセンサとプロジェクションを合わせて表現してください。プロジェクタを「映像投影」の装置ではなく、もっと原点に近い「光」の装置として考えてみてください。またスクリーンや壁だけでなく、廊下や窓や水面、タテ・ヨコ・斜め置き、あえて影を見せたり、何かに反射させた光をみせたり、様々な発想が考えられます。四角い画面だけでおさまらず、物体や空間を巻き込む光の現象を、実験しながら発見してください。
カラスの見ているゴミ捨て場
駄場 道拓/中村 美礼/野村 華音/早野 綾音/Byeun Jungwon
私たち人間が普段見ている世界は、RGBの3色で構成されていますが、カラスの目ではそれに加えて紫外線も感じ取れるといわれています。その特徴を踏まえ、紫色を軸にした3次元の幾何形態によって、カラスが見ている光の世界をこの作品で表現しました。
選抜コメント
「ゴミ捨て場の1日の光」をカラスの目から見える光として表現した作品です。ゴミ捨て場という一般的に汚いとされるものを敢えてテーマにし、美しくして見せたことが斬新でした。さらに”鳥の眼は人間の眼では捉えられない紫外線の光が見える”ということを踏まえ、カラスの見た光は、紫を色の軸にした３次元の幾何形態で表現されています。その未来的なイメージがまた都会のゴミ捨て場というテーマに説得力を与えています。
担当教員：久世祥三／荻野康之
雨の一日
岡田 菫/加藤 陽/狩野 あおい/川舩 琴冬/菊池 陸友
傘に付けたセンサで雨量を操作し、長靴で地面の波紋を広げる体験型インスタレーションです。リアルと非現実を融合した、雨の日の光を表現しています。
選抜コメント
「雨の日の1日の光」を、傘を手にとる動きをセンシングし表現した作品です。光に照らされるビニール傘と人物と床面がレイヤー的なスクリーンとなり、空間をより広く立体的に見せた点、そして傘をもつと雨が降り出すという意外とも言えるインタラクションによって、体験に驚きの要素が生まれた点が魅力的です。さらに傘と床の反射光など、美しさを感じるポイントが多く潜在し、次につながる作品になったと思います。
担当教員：久世祥三／荻野康之