三上晴子「Eye-Tracking Informatics〜視線のモルフォロジー」
YCAM/山口情報芸術センター|2011年12月-2012年3月 |2人版インスタレーション
ICC/インターコミュニケーションセンター |2011年12月|1人版インスタレーション

「視ることそのものを視る」「視線を成立させる意識と無意識の連鎖」をコンセプトに、2 名の体験者の視線の軌跡を生成していくインスタレーション。体験者は、3次元仮想空間内に可視化される視線によって、触覚的ともいえるコミュニケーションを体験し、この 過程で体験者の視線は「バイオアーキテクチャー」とも言えるような、有機的で複雑な構築物をつくり出していきます。
 
この『Eye-Tracking Informatics~視線のモルフォロジー』は、視点の移り変わりを視神経としてイメージ化しています。技術の進化により観客の視線入力は裸眼での表現が可能となり、それにともないサウンドも耳の後ろに装着されたスピーカーからの音響だけで構成されています。
2人版では、2つの視神経が重なり合い、永遠の繋がりが思わせるインスタレーションで、1人版では1人の視点を他の観客と共有する映画館のような形式で展示しました。「視ること自体を視る」というコンセプトを追求し表現されたこの空間は体験者の視神経と脳にダイレクトに影響し、体感した者にしか分かり得ない世界になっています。

今回の再制作では視線入力技術にオープンソースプロジェクト「The EyeWriter ver 2.0」を導入することで、デバイスの装着が不要となり、裸眼の状態で広範な視界を確保したうえで、開放的なナビゲーションをおこなえるようになっています。YCAMインターラボの伊藤隆之や大脇理知の技術協力や、また、evala(音響)、平川紀道(プログラム)といった優れたアーティストをコラボレーターに迎え、ビジュアルやサウンド、インタラクティビティなど原作のあらゆる要素を大幅にアップデートしています。
*Former version: "Molecular Informatics" 1996

[視線システムが組み込まれたイス]                                         

[視線によって視神経のような線が描画されていく体験プロセス]

[アーティスト・ドローイング]

 

Photo:Ryuichi Maruo(ycam)