Press release
 山口情報芸術センター(YCAM)presents
アートインスタレーション/「科学とアートの対話」
“gravicells - gravity and resistance”   Seiko Mikami + Sota Ichikawa
「gravicells[グラヴィセルズ]− 重力と抵抗」  
アーティスト:三上晴子+市川創太

キュレーテイング:阿部一直(YCAM)  
共同製作:YCAM InterLab; 山元史郎(ディレクター),伊藤隆之(音響), 大脇理智.

2004年5月15日(土)〜6月20日(日) 10:00〜22:00(火曜休館)
山口情報芸術センター
/スタジオB
 入場無料

*関連シンポジウム「重力:知覚から表現へ」 日時 : 2004年5月16日(日) 14:00〜16:00
場所 : 山口情報芸術センター/スタジオC

<山口情報芸術センター(YCAM)へのアクセス>
JR新山口駅から
・JR山口線湯田温泉駅下車、徒歩20分
・JR山口線山口駅下車、徒歩20分/バス10分(中園町か済生会病院前下車)/タクシー5分
・防長バスで25分、中園町下車
自動車利用
・山陽自動車道で防府東ICから30分
・九州・中国自動車道で小郡ICから15分

山口情報芸術センター
山口県山口市中園町7-7 〒7530075
TEL: 083-901-2222  FAX: 083-901-2216
info@ycam.jp  http://www.ycam.jp/



山口情報芸術センター(YCAM)では、科学的世界観とアート表現を、最新のメディアテクノロジーを媒介にして共有可能な体験をつくりだすプロジェクト「科学とアートの対話」プロジェクトをスタートします。
今回は、その第1弾として、来る5月15日(金)より6月20日(日)まで、知覚によるインターフェイスを中心とした作品を発表してきたアーティスト・三上晴子と、建築家で実験建築ユニット「doubleNegatives」主宰の市川創太両氏のコラボレーションによる新作体験型インスタレーション作品「gravicells -重力と抵抗」展を開催いたします。

■ 作品概要
重力と抵抗。その均衡のもとに、わたしたちの世界のすべては成り立っています。この作品は、重力を日常とは違った形で感じることにより、身体を再知覚し、人間の新たな感覚を開いてゆく可能性をもつものです。
作品は、室内空間(YCAM/スタジオB)に、重力とそれに対する抵抗力という、2つの引き合う引力磁場のような仮想の力学場を特殊な装置とセンサーによって設定します。その中に観客が入って自由に歩き回ることで、普段自覚的に意識していない身体への重力の負荷と、それに対抗する反力を感じることができ、また他の体験者の力の作用も感じ取ることができます。
参加している体験者全員の動きと変化が、センサーを通じて音・光(LED)・画像の動きに生成され、空間全体が大きく変容していく体験型のインスタレーション作品です。またGPSにより展示空間が同時に位置計測されており、地球の外部における観測点を取り込んでいます。これは、わたしたちの知覚領域が拡張されたものとして、インスタレーションの場も重力によってつねに運動している相対的場であることを提示し、多義的な重力の解体の可能性を感じとっていくための装置となります。今回は、YCAMにおいてのアーティストの滞在制作をへて発表される新作で、重力センサーや装置などこのためにすべて独自に開発されたものになります。


*gravicells(グラヴィセルズ)
cellとは、建築用語で部屋や個室を表し、生物用語では細胞を示すように、空間の単位を表しています。今回の作品では展示空間全体から人間の細胞空間まで、そこに負荷されてくる重力とそれへの反発力を空間的に可視化しようとする意図をこめています。


■作品体験内容解説
インスタレーション空間の中央には、40cm×40cmの計測器225枚のセンサーが内蔵された6m×6mの平面の床が設置されています。そこに体験者が立ち、移動すると、加重が瞬間的、連続的に位置・重さ・速度の変位が計測・解析され、光・音・画像に反映されて大きな空間的変化を生み出していきます。現実空間と同期する仮想空間は重なり合い、空間のジオメトリを再構成して、体験者の重力による座標のゆがみをつくり出します。


床のスクリーンにプロジェクションされているのは、距離計測を意識したグリッド画像であり、体験者の位置、動きに連動して座標系をリアルタイムに生成、修正し、ジオメトリを構成します。また、目線の高さに設置された同じく6m×6mのグリッド状のLEDの光による水平ラインとマルチチャンネルによる音定位は身体のインデックスを表し、光量変化と音の方向性において連続したデータとなって空間を変容させていきます。

またインスタレーションが設置される場所自体は、GPS衛星により同時に位置計測されており、地球の外部における観測点を取り込んでいます。これは、わたしたちの知覚領域が拡張されたものとして、インスタレーションの場もまた静止している場ではなく、重力によってつねに運動している相対的場であることを提示し、多義な重力の解体の可能性を感じとっていくための装置となるわけです。


今回の作品は、同時に複数人数の体験.が可能となり、「一つの観測点(体験者)」から、「複数の移動する観測点(体験者達)」を扱っています。体験者間の存在が相互影響を与え合う、より複雑な重力と抵抗のプロセスの表現が提示可能となっています。体験者がセンサー領域内にいない場合も、この力学計算は継続され、変化し続けます。


■ 作品の背景 From Artist
  重力は第6の知覚と呼べるのではないだろうか。
私達の身体は内耳にある三半規管が重力を捕らえ抵抗している。車に乗ってほんの少しこの知覚を揺すぶられただけで酔ってしまう程、重力と身体の関係性は深い。知覚を補助し身体機能を補完するものとして、目には眼鏡、耳には補聴器が装着されるように、人口内耳は重力という知覚を補い、長年の重力の歪みで衰えた老人は転ばなくなると言う。
  人はなぜ、嬉しい時には上を見上げ、胸が高鳴り、飛び上がるのか、そして、悲しい時は首をもたれ、うつむくのか。これらは、私達は精神までも重力に縛られていることの表れであり、「上下」という価値観は、神は常に上方に存在し、地獄は地下にあるとされていることからもうかがえる。日本語/外国語に関係なく、言葉の中にも「方向」から由来しているものが多く、上司/部下、左翼/右翼、上流階級/下層階級、沈む、陥る、奈落の底、上から監視される、気分は上々など、有象無象に存在する。
  上下左右という「方向」は、身体が重力の働く環境の中で機能しているという事実から生じ、私達の空間概念に深く取り付いて離れようがない。「崩れ落ちるツインタワー」という「重力と抵抗」の構図の前にも、私達はただ見るだけで無力だった。このように、私達は重力からは逃れられない生活環境に存在し、建築物の形態はもちろんのこと、室内空間、プロダクト製品、身体、内臓、あらゆる有機物、細胞まで、地上に存在する全てが重力という力の支配が形を変えたものといってもいい。
   そして、重力は「自然界に存在するといわれる4つの力のうちの一つ」で、もっとも弱い力、「全てのものがお互いに引き合う力」である。今回の作品は、この物理作用に着目し、日常空間と地球の質量との圧倒的な差を感じながら、重力という広大で深遠な圧倒的な力の一部を切り取って提示したプロジェクトである。


■アーティストプロファイル
三上晴子
アーティスト。
1984年から情報社会と身体をテーマとしたインスタレーション作品を発表。1992年から2000年までニューヨークを拠点に活動。1994年からは知覚によるインターフェイスを中心としたインタラクティヴ作品を中心に発表。1996年視線入力技術を応用した作品「モレキュラー・インフォマティクス」(キヤノン・アートラボ企画展)を発表。ロッテルダムDEAF(オランダ.1996,1998)、ミロ美術館(スペイン1999)、ナント美術館(フランス,2000)、ベルリン・トランスメディアーレ(ドイツ2002)など、ヨーロッパ各地でも多数の展覧会を行う。1997年NTTICC開館時の常設となった聴覚と身体内音による作品「存在、皮膜・分断された身体」を発表。その他、触覚による三次元認識の作品などがある。現在東京在住。多摩美術大学助教授。
http://www.idd.tamabi.ac.jp/artworks/index.htm

市川創太
建築家。doubleNegatives主宰
1995年より空間の表記方法をテーマにしたプロジェクトを開始し、身体と視点・観測点の関係を切口に、建築を成立させる様々な拡張領域を考察する。1997年ドイツのメディア・アーティストKnowbotic Research(ノウボティックリサーチ)の東京におけるプロジェクト《IO_DENCIES》に参加。1997年にライフスケープ研究所に入所、荒川修作+マドリンギンズの数奇屋建「ひなやプロジェクト」の基本設計および実施設計を担当する。1998年に多領域から専門家で構成する建築ユニット「doubleNegatives」(ダブルネガティヴス)を開設。建築家としてディレクションを手掛ける一方、個人としてソフトウェア開発や、ネットアート、クラブイヴェントでのVJなども行う。2000年宮城県に新設された「感覚ミュージアム」に参加し、常設のインタラクティブ作品である音の建築「dqpb #2.0-dynamic quadruple phonic building」を発表。
www.doubleNegatives.jp

 ■Project biography
2003年よりスタートした「重力と抵抗」プロジェクトは、様々なバージョンへと発展中で、今後の展開も含めて現在進行中のプロジェクトである。
2004年は、YCAMでの発表の後、ヨーロッパでの展示が予定されている。

■「重力と抵抗:粒子と流動バージョン」
2003年1月 多摩美術大学メディアセンターホール
”Gravity and Resistance": The Version of particles", Tama Art University
Media Center, Jan 2003, Tokyo.
■「重力と抵抗:無響室バージョン」
2003年3月 NTTインターコミュニケーションセンター「コミュニケーションの現在
2003」
”Gravity and Resistance": The Version of the Anechoic Room". NTT
Intercommunication Center [ICC], March 2003.
■「マイクロ・グラヴィティ」シンポジウムとワークショップ
2003年6月 ロッテルダム(オランダ)
”Gravity and Resistance": Workshop and Symposium. V2 Organisate,
Rotterdam, The Netherlands, June 2003.



   
©Gravity and Resistance project 2004