「gravicells[グラヴィセルズ]− 重力と抵抗」  三上晴子+市川創太
山口情報芸術センター/スタジオB  2004年5月15日(土)〜6月20日(日) 10:00〜22:00(火曜休館) info@ycam.jp  http://www.ycam.jp/
 
■ 作品概要
重力と抵抗。その均衡のもとに、わたしたちの世界のすべては成り立っています。この作品は、重力を日常とは違った形で感じることにより、身体を再知覚し、人間の新たな感覚を開いてゆく可能性をもつものです。作品は、空間内に、重力とそれに対する抵抗力という、2つの引き合う仮想の力学場を特殊な装置とセンサーによって構築されています。その中に観客が入って自由に歩き回ることで、普段自覚的に意識していない身体への重力の負荷と、それに対抗する反力を感じることができ、また他の体験者の力の作用も感じ取ることができます。参加している体験者全員の動きと変化が、センサーを通じて音・光(LED)・画像の動きに生成され、空間全体が大きく変容していく体験型のインスタレーション作品です。またGPSにより展示空間が同時に位置計測され、受信している複数のGPS衛星も作品の力の一部となり、地球の外部における観測点を取り込んでいます。これは、わたしたちの知覚領域が拡張されたものとして、インスタレーションの場も重力によって、常に運動している相対的場であることを提示し、多義的な重力の解体の可能性を感じとっていくための美術作品となります。
*gravicells(グラヴィセルズ)

cellとは、建築用語で部屋や個室を表し、生物用語では細胞を示すように、空間の単位を表しています。今回の作品では展示空間全体から人間の細胞空間まで、そこに負荷されてくる重力とそれへの反発力を空間的に可視化しようとする意図をこめています。





■ 体験方法
1.引き合う力が縦と横にピンと張った状態の床面に一歩足を踏み入れて下さい。
2.この6mx6mの不安定な平面上をただ、立つ、あるは、移動することでインスタレーションに参加できます。体験者は「一つの観測点」となり、他の体験者が入った時には「複数の移動する観測点」が空間の力を複雑に変容させていきます。同時体験人数の制限はありません。
3.平面の床には細胞のような40cm×40cmのグリッド225枚が敷かれ、その内部には、ON/OFFではなく、位置・重さ・速度の変位を瞬間的に連続して検出できる独自に開発した自作のセンサーが埋め込まれています。
4.体験者の力と上空からのGPSの力と空間で変容していく力との関係性が光、音、映像による空間を作り出します。
5.これらの空間の変容は、重力にまつわる物理計算の理論値から得られる動きをプログラムにし、作品構造と複数の移動する体験者達によって、力のダイナミズムが変わっていきます。解析を行うソフトウェアは、GPSと体験者間の力、速度、位置によってそれぞれの座標系をリアルタイムに生成、修正し、幾何学を再構成します。そして、座標のゆがみを作り出します。
6.YCAMのビッグウエーブ屋根に取り付けたGPS衛星の位置計測器によって、作品空間にリアルタイムにこの上空にあるGPSの電波の感度と位置、動く方向が画面に現れます。GPSの力も同時に運動している相対的場となり、インスタレーション空間は外部環境を取り込んでいます。

7.体験者が居なくなると、空間は、元のピンと糸が貼った状態になりますが、背景ではGPSなどの各力がリアルタイムで動いています。このように作品構造が変化するプロセスのループが連続したデータとなって延々と続いていきます。


    

   
©Gravity and Resistance project 2004