Relational diagram


<-床プロジェクション画像:体験者とGPSの力が幾何学画像によって変容。

■壁プロジェクション画像:作品で起こっている全ての力をリアルタイムに可視化->

A-1

中心座標軸:作品が設置されているYCAM・山口情報芸術センターの位置。

A-2
GPSの変化:この作品空間の上空に居る各GPSの番号と感度(0-100dB)が示され、GPSが移動した方向は軌跡となって現れる。(感度が強ければ明るく点滅し、この空間に及ぼす力も大きくなる。感度が低ければゆっくりと弱く点滅し、消えて行く。)

B-1

光・LED:体験者の力は、光による断面線の光量変化によって表現されている。(例えば、全てのポジションで同時に安定した力がかかっていた場合は、周囲を囲むように中間の光量で均衡を保ち、大きな力が引き合う場合には、広範囲で速度が速い光量変化になる。光量変化は光の強さ、速度、点滅の度合いなどで示される。)

B-2

体験者の力の位置:丸い白い光の左右の移動で可視化。

B-3

床構造の変化:赤い線の上下の動き(0-1000)で可視化。

B-4

DENSE:全体にかかっている力の密度が示される。

C-1

幾何学画像の再構成:解析を行うソフトウェアは、GPSと体験者間の力、速度、位置によってそれぞれの座標系をリアルタイムに生成、修正する。
C-2
音:マルチチャンネルによる音定位によって、空間の歪みや動きの変化を表現している。

D-1
空間計測スキャン:一定の速度で空間の歪みを計測していく。決まった時間帯で空間を3次元として計測するスキャンが現れ、力の上下前後左右の方向性を測る。

A: 位置 / 外部からの観測点としてのGPS衛星


重力と抵抗というテーマを考える上では、これらが働く位置とそれを観測する位置が重要になる。
私たちは本来主観という観測点しか持たない。 しかし、複数の観測点を集計することで、客観という観測点を、擬似的に作り出すことができる。
地球外から私たちの位置を計測するGPSの構造は、観測点や相対性の問題を考える上で興味深い。
GPSとはGlobal Positioning Systemの略語で、地球の軌道上に打ち上げられた衛星から発する信号を受信し、どの座標にいるかを知ることができる、カーナビで広く知られるシステムである。

fig.1
地球の表面に立っている私たちとは図のような距離関係にあり、地表の私たちからは非常に遠い観測点である。三つの衛星からの距離を測って、残りひとつで時間の誤差を修正する、つまり最低4つの衛星からきた信号を受信する必要がある。GPSが稼動するということは4つ以上の衛星があり、常に複数のGPS衛星が上空に存在している。


fig.2 これはプロジェクトの途中で実験したひとつの結果で、東京で約半日観測したGPS衛星が上空を通過した軌跡を記したもの。経路が歪んで見えるのは、地上で観測しているわれわれも動いてしまっている為。ここからも私たちの場所が動的で、相対的に定義されていることがわかる。

fig.3 滞在制作の前半に行った作業で、作品の真上であるYCAMの屋根の頂上にGPSレシーバーを取り付けている。

fig.4 GPSは地球外からの観測点として、作品に参加していると同時に、重力要素としての体験者、と同じように作品に介入する。作品上空約仰角60度の範囲に入ったものが作用するようにプログラムしてある。

B: 引き合う力(引力=重力)/ 光による力の断面線




重力は万有引力という、質量をもった物同士が引き合う力、であることは17世紀から解明されている。
力の大きさは近似的に距離の2乗に反比例し、質量の積に比例する。
私たちの生活空間では、身体に対して、地球が広大なため、全てが地球の中心に向かってひきつけられている。

fig.5, 6 複数の質量のあるものをランダムに配置した場合。

fig.7 今回の作品空間では、引き合う力が、光の断面線と呼んでいるLEDの光によって可視化される。
作品空間内で発生している重力と、それに抵抗する力の大きさを1平面でスライスした断面線になっている。

fig.8 体験者が一人の場合は、主にその荷重によって影響する。
fig.9 体験者が二人以上の場合は、体験者の動きによる荷重に加え、それぞれが引き合う力によっても影響する。


C: 幾何学画像 / 空間の媒体 / 測地線



画像は空間のつまり具合、密度を目で見える形で表示している。これを構成している測地線と重力の関係は深い。

fig.10 測地線とは空間の中での一番近い距離をあらわしたものである。私たちの生活空間である地表は球面であり直進しても、その軌跡は円弧を描く。この空間の曲率・歪み具合には、重力=引力が関係している。


fig.11 ひとつの質量を発生させると、その大きさに応じて空間が歪む。これは体験者もしくは、GPS衛星の存在による。
フラットで均質な状態が、体験者やGPS衛星によって発生した重力で、空間が歪み、幾何学画像に表れる。これらの一本一本が測地線である。
fig.12 異なる2つの線は、それぞれの空間での直線ということになる。
fig.13 二つ以上発生させると、質量に加え引き合う力が発生し、それによっても歪んでいく。

D: 空間スキャン / 計測


空間スキャンは、空間の歪みを定期的に、観測・表示する。計測を行うには、均質な物質・運動が必要である。


空間を示す線は横方向だけではなく、上下に変化している。この作品空間は全て立体的に計算され、インスタレーションでは一つの層のみを表示している。 空間の歪みは、そのなかでの観測では認知できない。空間を相対的に考える、複数の観測点という項目を今回の作品は含んでいることが分かる。