浅野 真由
メディアとデザインゼミ
もしもあなたの家族や恋人、ルームメイトが突然病気やケガで病院に運ばれて、その人の代わりにあなたは問診に答えられますか? もしもあなたが急に病院に運ばれてしまったら、連絡してほしい人や身の回りのこと、不安ではありませんか? これは病気やケガ、災害時などの緊急時に備えて、家族の健康情報や家庭の運営に関する情報を共有したり、家族でこれからのことを考え直す機会をサポートする覚え書き手帳。また、書き込むページだけでなく、入院や介護、死亡時に役立つ知識をまとめた読むページもセットとなっているマニュアル兼ガイドブックです。
ー制作にあたって影響を受けた作品や言葉は?
この手帳を作り始めた1ヶ月ほど後に、コクヨなどからエンディングノートが販売されていることを知って、参考にすると共に、自分の卒業研究制作との違いを考察しました。既存のものはどれも一人1冊式のもので、家族で情報を共有しにくく、それを中心に家族間で今後について話し合うことがしにくいです。そこで、私の作るものは、家族全員分の情報を収納し、その手帳をきっかけに家族が今までのことからこれからのことを話し合うことができるものとしました。やはり、病後どうするか、死後どうするか、という事後の対応も大事ですが、その前からの対策が鍵となります。ふだんから健康に気を使い、こういった先のことも考えることで、若い世代はこれからの心構えをし、中年世代は責任を再確認し、高齢者世代は美しく人生を終わる準備を始める…そういった心の動きをつくれたらと思いました。
飯間 翔子
サービス・デザインゼミ
「いんしょう×アイドル」は、「自分が他人(友達)からどう見られているのか知りたい」と思う人に向けて作ったツールです。あなたとあなたの友達とでお互いの印象を言葉で出し合い、それをアイドルという目に見える形に変換することで、自分では気づけなかった新しい一面を発見することができます。他人に自分の印象を言葉で表してもらい、視角化することにより、自分自身を知るきっかけになります。でき上がったものをお互いに披露することによってそこから話題が生まれ、会話が広がります。
井上 瀬里香
デザイニング・エモーションゼミ
この作品は、私が就職活動を通し将来へ不安を感じたことが始まりです。自分はこれから何をしていくのでしょう。それでも徐々に未来が必ず近づいてくる気配に気づきます。目には見えないけれどそこに何かがある、存在するといった不思議な感覚はだれしも持っていると思います。そんな気配を視覚的に感じてもらうことをコンセプトに制作しました。また、たくさんある気配の中から「時」を感じるものを選びました。一人ひとりの目線にこれから訪れる気配を感じてもらいたいです。
井上 祐里奈
メディアとデザインゼミ
日常には、さまざまな動きや変化が溢れています。その風景を画面に収め、さまざまな情報を抽出、切り貼りしていき、別の絵画のように起こし直しました。この作品は、人の「物事への気づき」を刺激できればよいと考え、制作しました。人はふだん、目に入る情報すべてを意識して見ているわけではなく、視界には入っているけれど認識はしていない事柄が多いと思います。いつも見ている風景や日常でよく触れるものに対して、「こんな一面もあったんだ」「いつも見てる景色はこう見えるんだ」など、新しい視点や気づきを感じていただけたら幸いです。
岩井 美咲
サービス・デザインゼミ
浮世絵をファッションに取り入れることで、今まで興味を持っていなかった人にも身近に感じてもらいたい、という思いで制作しました。この作品は著名な浮世絵作品を模写し、改めてコラージュしたアイタトゥーシールです。単に、もとからある作品を切り取るのではなく、再構築する際には自分がその絵を見た瞬間に頭に浮かんだイメージを大切にしました。ただ鑑賞するのではなく、自分の一部になることでその作品に対する新たな思いが生まれるのではないでしょうか。
内田 絢香
ワークショップとインタラクションゼミ
ゲームに関することばや、私がゲームを通して感じたことばを作品にしました。きっかけは、私の好きなことを卒業研究制作のテーマにしようと考えたことが始まりです。私の一番好きなことは「ゲーム」です。だれもが日常で使用し、また人に何かを伝えることを一番得意としている「言語」を用いることでゲームに興味がない人にも魅力を共感してもらえるのではないかと考えました。キャッチコピーや名言、また私の体験をもとにゲームの魅力を発信します。
内田 花梨
サービス・デザインゼミ
電子書籍は紙の本と異なり個体差はなく、全く同じものが各々に配信されます。劣化することも変化することもありません。そして何よりデータなので持っているという実感がわきにくいと思います。「bibliomemory」は、端末の情報に応じて電子書籍の見た目が変化するアプリケーションです。このアプリケーションに電子書籍を登録すると、あなたが書籍を読んだ時の天気や場所に応じて、書籍の見た目が少しずつ変化していきます。電子書籍をただのデータではなく、自分だけの1冊にしたいという思いから、この作品を制作しました。
大橋 真紀
メディアとデザインゼミ
何について知識を持っていて、何について知識を(怠惰で、または故意に)持たないか、どんな感情を知っているか、また知らないか、一人の人の人格は、その人が知っている事柄と知らない事柄だけで作られていると仮定しましょう。その仮定をもとに、だれの意図も関与しないような偶然であり、また必然でもあるルールを用いて多様な人格を創作しました。この作品は「何かを知っていて/何かを知らない」という事項だけで人間の人格を感じられるのかどうかの実験です。
ーアイデアが生まれたきっかけは?
卒業研究制作に取り組み始めた頃は「ナンセンス」をキーワードに、コラージュ作品を制作していました。なぜ「ナンセンス」な作品に惹かれるのか探るうちに、19年前に亡くなった自分の父親について思考するようになりました。父親を知る人に話を聞きに行ったり、父親の独身時代から晩年までの日記をすべて読みました。その中で見えた父親の人物像は予想以上に情けない男性でしたが、とても好ましい人物でした。父親に「会ってみたい」と思ったのは人生で初めてのことでした。このことを話した時、反応はさまざまですが「可哀想な子」とされることもしばしばあり、そのことに強く違和感を感じました。どうやって説明したら、悲しい気持ちは存在するけれど、同情を買いたいわけではないことを正確に伝えることができるのかを考えました。そこで「これは『死んだ人に会いたい』という気持ちを知っているという知識の一つに過ぎない」という文句を思いついたのが卒業研究制作のきっかけです。
小沢 咲貴
デザイニング・エモーションゼミ
レトロフューチャーとは科学文明の飛躍的発展を想定した懐古趣味的な未来像のことです。現在、日常の行為はどんどん便利なものへと変化し、ボタン一つでさまざまな操作ができるようになりました。より便利に、そしてスマートになるに連れ、その行為が持つ特有のフォームや指の動きなど、細やかな個性は少なくなっています。大量生産や大量消費が進み、使い捨てが増えるであろう未来で、レトロフューチャーのように楽観的かつ、「もの」と「行為の個性」を大切にした明るい未来像を制作しました。
小股 由莉子
デザイニング・エモーションゼミ
有害鳥獣駆除として駆除された鹿から、有害鳥獣駆除の現状について伝える作品です。有害鳥獣駆除とは、人間社会の便利さと引き換えに、鹿や猪などの鳥獣が農林業に被害を及ぼすまでに増えてしまったため、個体数を減らすために行われる狩猟のことです。私は、ある猟師さんとの出会いをきっかけに実際に狩猟へ行き、被害に苦しむ農家の方や鳥獣を駆除する猟師さんの想いを聞いて、有害鳥獣駆除の現状について伝えていきたいと考えました。そこで駆除された鹿の皮を自分でなめし、毛皮、本、バッグの異なるアプローチで伝える作品を制作しました。
ーこれまでの自分に影響を与えたこと、今の自分に繋がっていること
大学1年次からボランティアやPBL(Project Based Learning)、展示会のスタッフやパフォーマーなどに積極的に参加したことです。いろんな人と会えて、かつ経験が積めてよかったです。学外でも、ろくろ体験や魚釣りなど、新しいことにどんどん挑戦していて、そういうことが意外と課題制作でアイデアのきっかけになったりします。他には3年次後期に取り組んだ「深読み桃太郎」の制作。“なぜ?”を突き詰めてできた作品で、鑑賞者の桃太郎に対する固定概念を覆す作品になったのではないかなと思います。この作品で初めて製本に挑戦したり、リサーチすることの重要性も実感して、後の作品制作に活きています。
角戸 絵理
エンタテイメントとデザインゼミ
「グリム童話(子供たちと家庭の童話)」はグリム兄弟が収集、編集したドイツの童話集です。1812年の初版発行後、7版まで改定され現在に至るまで語り継がれてきました。しかし「残酷だ」「子供向けの描写ではない」という批判を受け改定されましたが、実際に起こっていた出来事がベースとされている描写が多々あります。それらの描写から当時の善悪などの価値観、時代を感じ取れるのではないかと考えました。この作品は、批判の多かった初版と現在多く読まれている7版を読み比べることができるデジタル絵本です。
金井 愛子
デザイニング・エモーションゼミ
私たちはなぜ食べるのでしょう?その答えを探すために、食べる、という言葉に6つの疑問詞をつけました。「私たちは何を食べるのか」、「どこで食べるのか」、「どちらを食べるのか」、「どのように食べるのか」、「だれを食べるのか」、「なぜ食べるのか」。正解は私には分かりません。それは「なぜ生きるのか」の答えを探すことに似ているからでしょう。それでも、自分の食を考えることで、自分自身が分かります。他の生物との繋がりを感じます。人類の営みが見えます。鑑賞者一人ひとりが、自分なりの答えを探す過程を楽しんでくれたらいいなと思います。
上迫田 真由
エンタテイメントとデザインゼミ
色を調べていた時に「由来」から名が来ているもの、それ以外に流行、出来事、人名、状況など、さまざまあることを知りました。そこで、和の色を知る上で、由来になったものをイラストの中から探し、楽しんで和の色を知ってもらいたいと思いました。色が発生した時代のイラストの中から自分で由来を探し、その時代の和の色を知ることができます。また、色以外にも隠れているものもあり、ただ和の色を知るだけでなく、「見つけることの楽しさ」も重視しています。
川上 成海
ワークショップとインタラクションゼミ
レシートを再構成し、形と情報の関係を提示しました。レシートには買い物した時の日付や商品名、メッセージなどさまざまな情報が詰まっています。そこで、レシートの情報をロゴ、日付、商品名などに分解し再構成しました。中身がばらばらになると、レシートという形ではなくなります。レシートは、ロゴ、日付、商品名などそれぞれの情報が揃うことで関係が成り立っています。買い物をし、レシートをもらう私たちがいることでレシートという存在が生まれるのかもしれません。
ー選んだ媒体や表現方法のこと
制作する中で、レシートは基本白黒で長方形で小さいもの、見返すとその時を思い出すもの、捨てられるものなど、何の疑問もなく捨てていたレシートのさまざまな要素に気づき、レシートの存在価値って何だろうと、レシートに対しての考察を深めていきました。また身近な人にもレシートをもらい、集めました。そこには同じお店のレシートがいくつもあったり、同じものを何度も買うなど、レシートを見るだけでその人の人となりが見えることに気づきました。そこで、レシートに記載されているロゴ、日付、など要素ごとに切り離し、ロゴだけを繋ぎ合わせたレシートなどを制作しました。何度も同じロゴが出てくることから消費の連続性を表現し、額縁からはみ出すレシートには私たちが日々大量消費することを提示し、このような作品となりました。
河村 美帆
サービス・デザインゼミ
「声の大切さを知ってもらい、思い出として残してほしい」というテーマをもとに進めました。私のように電話することに敷居の高さを感じる人でも、気軽に声のメッセージを届けられたら、そんな思いから始まった作品です。誕生日や受験当日、結婚式など、相手の大切な日には自分の声で伝えたいメッセージがあると思います。このアプリが、そんな人たちのコミュニケーションのきっかけになれば幸いです。
北田 貴詠
ワークショップとインタラクションゼミ
スーパーマーケットの陳列棚に並ぶお肉模様が昔から好きでした。マイルドなピンクに深みのある赤、そして白。それらが複雑に絡み合い、独特な模様を構成する様はとても興味深く思います。しかし、目の前に広がる鮮やかな色彩たちがすべて「生物の死骸の色」だと気づいた瞬間、違和感が体を駆け巡りました。「なぜ、グロテスクなはずの死骸が本来目に見えない模様と色彩を生み出し、私に綺麗だと感じさせているのだろうか?」と。そんな疑問がきっかけとなり、お肉模様に宿る「特異さ」を形にするための作品が生まれました。
栗崎 心
デザイニング・エモーションゼミ
私たちは日々の生活を送っていき、少しずつ時間を積み重ね、歳をとっていきます。そうしていくうちに、だんだんといろんなことが当たり前になり、同じ1日が過ぎているだけと考えるようになるのではないでしょうか。いつしか当たり前になってしまった風景―空気の味や、葉の色、花の香り、鳥の声、土の感触...何も変わっていないようできっと世界は毎日変化を続けています。記憶を振り返り気づいた、そんな日常の出来事、日々時間を積み重ねていくうちに忘れてしまいがちな“大切にしたいこと”を15のお話にし、箱と本で表現しました。
片岡 フグリ
メディアとデザインゼミ
四季折々の音がサンプリングされた、ループレコードが永続的に回り続けます。平素は各々の音によりマスキングされた弱音のノイズが場を生成していますが、ランダムな静止と動作をプログラミングされたモーターをボリューム部位に施すことで、そのフェードイン、フェードアウトから、時に思い出したようにいずれかの音が認知されます。その現象を「想起の瞬間」に見立てました。また、季節と季節の変わり目のようなビジュアルを持ち、今回は音を出さずに回転しているだけのレコードが乗ったターンテーブルを四季の節目節目に配置し、記憶の可能性の幅を広げました。
計良 風太
メディアとデザインゼミ
バラの花の抵抗値をセンシングして、その数値をバラ曲線の方程式を使ったプログラムを介し、花のようなグラフィックを作る研究制作です。元気な状態のバラをセンシングして得た値では、線のストロークがはっきりとした赤いグラフィックになり、枯れた状態のバラをセンシングして得た値ではぼんやりした緑色のグラフィックになります。バラの生死をバラ曲線の方程式を利用したプログラムで、花のようなグラフィックにビジュアライズしました。
小泉 優美
ワークショップとインタラクションゼミ
日本にて静寂の美の象徴とも言える松を黒1色で静かな水墨画のように見立て、対照的かつ現代的イメージの蛍光色の背景を組み合わせました。日本文化の今昔、日本古来、外来、さまざまに混ぜ合わさり矛盾しているようで調和した心地のいい感覚、形容しがたい浮世離れした面を表現しています。松を構成するキャラクターたちは日本の独特の空想的、内面的なキャラクター文化の一面と小さなものが集まっている日本らしさを表現しました。また長谷川等伯の「松林図屏風」を参考に現代的な新しい日本の美をボールペン1本と墨と鮮やかな色で制作しています。
小薬 隆典
デザイニング・エモーションゼミ
世の中には、大人になるにつれて何の興味や疑問も抱かなくなることがたくさんあります。忙しなく過ぎる都市での生活の中には、見聞きしているにも関わらず、ほとんど意識しなくなったものも多いのではないでしょうか。そうした物事には、知ることや考えることで見つかる新しい印象や発見がいくつも隠れています。それらを落書きという行為と経験を通して意識し、自由にとらえ直せる作品を制作しました。大人になったからこそ考えられることを、子どものように自由な発想と好奇心をもって日々の生活の中から見つけ出してみてください。
ー興味のある作品分野は?
イラストレーションを活かしたデザインや映像などに興味があります。最初にイラストレーションに興味を持ったきっかけは、幼少期に読んだ絵本やNHKで放送していた「みんなのうた」だったと思います。特に「みんなのうた」は録画して何回も見ていて、「トレロカモミロ」や「アップル・パップル・プリンセス」など印象的なものは今でもよく覚えてます。その関連で藤城清治さんの影絵も大好きでした。イラストレーションよりも、それを使ったデザインの方に興味がいくようになったのは、自分でイラストレーションを描いて展示するようになってからです。イラストレーションの展示会を見ている時にふと、額の中に大人しく入っているものよりも、日常生活の中に溶け込んでいるものの方が好きだと気づきました。
小谷 麻美
エンタテイメントとデザインゼミ
いきものはいつか必ず死んでしまう。しかし時間は常に一定に流れていますが、いきものの種類によって寿命の長さは全く違います。そこがとても面白いと思い、寿命をテーマに作品を制作しました。寿命についてまとめられたウェブサイトや文献はあるものの、テキストメインでただ表になっているものが多いです。そこで可愛いイラストを使って子供でも楽しく見ることができ、インフォグラフィックスで視覚的に寿命を比べることができるウェブサイトを作りました。
後藤 未来子
デザイニング・エモーションゼミ
「節句」とは季節の節目に旬の食べ物を味わい、お供え物をして邪気を祓い無病息災や子孫繁栄などを願う日です。節句の日に人と一緒に時間を過ごしたり、だれか大切な人を想うことは、愛情表現の一つや、忙しく過ぎていく日にふと立ち止まり、自分の気持ちを新たにしてまた1年元気に過ごそうとする気持ちを持つ大切なことだと思います。1年のうちで奇数月にある節句が11月にないことに着目し、11月11日に新たな節句を考え、身体も心も温められて健康に過ごせるように願う日として「揃保の節句」を定め、暮らし方をデザインしました。
ー作品から感じてもらいたいこと
私が節句を作るきっかけになったのは両親が毎年3月3日の上巳の節句にひな祭りをやってくれていたことでした。今は一人暮らしで実家にはいませんが親は毎年ひな人形を飾ってくれています。ひな人形を飾ることは大変なのに、私のために飾ってくれて私の健康に何よりも気を使ってくれる親に感謝しています。私のことを気にかけていてくれることを嬉しく思うし、これからも頑張ろうと思う気持ちにさせてくれました。節句はだれかが、だれかのことを想って、その人のために何か行動する日だと思います。忙しく過ぎていく日常の中でふと立ち止まって大切な人のことを想うことは、改めて考えてみると大事なことですし、他の人にもその気持ちを伝えたいです。そしてまだこの揃保の節句は浸透した節句ではないので、今までの節句にはない心の健康にも繋がるように大切な人と時間を過ごし、その人のことを想ったり感謝できるきっかけになるような、揃保の節句を将来浸透させていきたいです。
神原 優斗
メディアとデザインゼミ
デザインといえば華やかで直感的なものと思われがちですが、実際はそれだけではありません。デザインとはコンセプト、あるいはプログラムなど美術以外の技術からも発生するものであり、故にそれらを練り上げ、切り詰め、どう形にするのかという点こそ、その根幹と言えます。すなわち情報デザインとは、ただ美しく格好良い見た目を主張するのではなく、根幹を重視し作り上げていく方法なのです。それを踏まえ、あえて美術的な要素を用いずに表現し、根幹をよりはっきり見せようと書き上げたのがこの論文です。
ー作品から感じてもらいたいこと
リセットボタンとは、現在ではほとんど見向きもされず、注目されない機能です。就職活動中、面接で話したら「あんなもの、何の意味があるのか解らないし、研究する価値なんてあるのか?」と鼻で笑われるような、人によっては邪魔とすら思われているかもしれない機能でもあります。それでも、論文が一つ書けるほどの歴史や幅があり、さまざまな使い道があります。「何だかよく解らないけど~は嫌い」「触ったことも見たことすらないけど、きっと理解できないから手を着けない」というのはとても簡単で、手間も全く掛かりません。しかし、「まだ解らない」ということは逆に言えば「新しいことを知ることができる」「更に面白く発展させられる可能性がある」ということなのです。最悪読まれなくともよいです。ただ、邪魔で無駄に思えるものでも探求する、研究する価値はあるということを知ってほしいです。
論文より抜粋「5: 近代リセット応用法/乱数調整型」
榊田 遙
サービス・デザインゼミ
「絵を描く人に向けた新しい何かをつくる」をコンセプトに卒業研究制作に取り組む中で、絵の制作過程の一つである「アイディアを生み出すプロセス」に着目しました。これはいわゆるメイキングとは異なり、目に見えない制作過程です。ユーザーである絵を描く人の中には、このプロセス、すなわち「考えて」絵を描くことに不慣れな人がいます。そこでこのプロセスを可視化しスマホアプリにすることで、ユーザーにとって「考えて」描くための参考や足がかりとなるものを目指しました。
坂本 千彰
メディアとデザインゼミ
空間の中に二つの椅子があります。一つは三角形のスクリーンに覆われていて、もう一つの椅子の前にはカメラがセットしてあります。椅子に座るとカメラが座る行為を記録し、椅子から離れると映像がスクリーンに投影され、座る行為を三方向から見ることができます。この椅子の作品は、ジョセフ・コスースの「一つと三つの椅子(One and Three Chairs)」を参照し制作しています。コスースの表現した椅子の観念的な規定から、「椅子」と「座る行為」に焦点をあて、行為の記録と再生を行うことで椅子の象徴性や機能性についての表現ができないかと考えました。
佐藤 菜々子
エンタテイメントとデザインゼミ
近年、スマホゲームやニンテンドーDS と言った携帯型ゲームの普及、充実のため、子供たちの外遊びが減少している問題があります。実際に子供たちが外へ出て、見たり触れたりと五感を使って遊ぶことが、物事を判断する力をつける役割を担っていたり、子供の成長に大きな意味を持っています。このまま外遊びの機会が減っていくのは惜しいことだと思い、子供たちに馴染みのある電子ゲームに、空間で五感を使う仕組みを取り入れた遊びを作ってみたいと考え、この作品を制作しました。
四之宮 有紀
エンタテイメントとデザインゼミ
物語の人物を巻き込まれる一般人の視点で観ることをコンセプトにアニメーションを制作しました。古典の物語では、多くの場合、主人公が絶対的な正義として描かれますが、彼の行動に巻き込まれる人々は一体どう思うのか、どう感じるのか、そして、それを考えた時、われわれは何を思うのかをテーマにした作品です。
島野 里彩
エンタテイメントとデザインゼミ
私たちがふだん聞き慣れている童謡の多くが、海外から輸入されてきたものです。しかし日本で歌われている童謡の歌詞と、原曲の歌詞を比べてみると内容や話の展開が異なっていることが分かりました。日本では明るい子供向けとして改変されていますが、実際の原曲はその国の時代背景が知れる残酷な内容や、子供の教育のための内容などさまざまです。そんな違いを知ってもらうため、原曲の内容を分かりやすくアニメーションで表現しました。
菅 沙也子
エンタテイメントとデザインゼミ
人間の生活を、ミクロ(24時間)とマクロ( 一生)の時間軸で描写した3DCG 映像作品です。人間が生まれ、老いていくまでの暮らしを、7 つの部屋に分類しています。3DCG を私らしいイラストレーション表現に落とし込むことと、生き生きとした人間の動きを研究しました。ミニチュアをモチーフとしたモデリングの細かさ、たくさんの家具によって構成された生活空間の描写、年齢によって変化する生活習慣の描写にも注目して鑑賞してもらいたいです。鑑賞者がのんびりと懐かしい気持ちになれる映像に仕上げました。
高田 有紗
サービス・デザインゼミ
書籍やメモなど、さまざまなアナログ媒体がデジタル媒体へと変わっています。しかしその一方で、アナログ媒体も存在し続けています。デジタル化していく世の中で、アナログ媒体が絶えず使われ続けている理由は何なのか。それはひょっとして、デジタルをアナログに変えたら見えてくるのではないでしょうか? ふだん私が最も使用する機会の多いデジタル媒体「スマートフォン」のツールをアナログ媒体へ置き換えることで、デジタルとアナログ、それぞれのよさを知るきっかけになればよいと思い、この作品を制作しました。
滝田 仁美
メディアとデザインゼミ
この作品は、「身の周りに住んでいる生き物たちに興味を持ってもらう」ことをコンセプトに制作しました。ふだん私たちが生き物のたくさんいるところを想像すると、動物園やジャングルなど少し遠いイメージがあると思います。しかし、実際には、身近な風景の中にもたくさんの生き物が生きています。その生き物たちを楽しんで探してもらうことで、周りの生き物を、全く知らない「もの」という感覚から、「ご近所さん」という好意的な感覚に変わってくれればと思います。
武田 有美子
エンタテイメントとデザインゼミ
美術大学ってどんなところ? 情報デザイン学科って何を勉強するの? そんな疑問を解消しつつ美術大学の生活の楽しさを知ってもらうため、美術大学の情報を集めたエッセイ漫画を制作しウェブサイトとして展示しました。卒業研究制作展を観に来た美術大学に進学しようとしている中高生に向けた作品で、私が体験した多摩美術大学での4年間、受験から就職活動までを10話完結の漫画にしてあります。ウェブサイトにはエッセイ漫画の他にも細かい説明を載せてあります。
竹原 愛
デザイニング・エモーションゼミ
日常の中の「こんなのがあったらいいな」を集めた、何か違う、なにか気になる頭の中のクエスチョンマークを集めたかるたです。絵札は自由にテーマなどなく、自分の面白いと思ったことを追加できます。いろんな人の「面白い」をかるたというゲームを通じて目で耳で手で感じられるというコンセプトです。かるたという媒体を使うことで、人それぞれ違う面白いという要素を、それが目に見える形にし、お互いに知れて、またゲーム方式で耳と目、そして手で触れて楽しみながら感じられる形にしました。
ーアイデアが生まれたきっかけは?
私はふと「こんなものがあったら面白いな」とひらめく時があります。そういった「ひらめき」に基づいてものづくりを開始します。それを見つけるのは大体日常で生活している中で、無意識の日常の行動の中でふっと「これがこうなったら変だな」だとか、例えばトイレの個室にいる時、「あ、もしトイレが海の中にあったら面白いかも」などと考え見つけることが多いです。そして、小さい頃から何か思いついた時に、それを他人に話すのが好きでした。そんな私にとっての「面白い」とは、無意識の日常の中でふと違和感を感じた時の、直感的に脳にびびっとくるものです。しかも、脳にびびっとくるものというのは、人それぞれ十人十色に違う要素です。それが目に見える形にできたら面白いと思いました。みんなが頭の中でそれぞれ感じている、日常生活の「面白い」を、お互いに知れるものを作りたいと思ったため、「日常の中の違和感、面白いを形にする」というテーマに選びました。
立花 和弥
サービス・デザインゼミ
路上喫煙の対策として、現在行われている施策の多くは喫煙する場所を減少させることです。しかし、タバコの販売や喫煙すること自体を禁止せずに吸う場所を減らすだけでは、かえって路上喫煙をいたずらに増やしてしまっているように感じられました。当然、ルールを守らない喫煙者には絶対的に非がありますが、善意をもって分煙に取り組む喫煙者が多くいることも事実です。そんな喫煙者のために分煙を自ら働きかけることができるツールをデザインしました。
築地 礼奈
ワークショップとインタラクションゼミ
私は「日常」の出来事を、だれかによく話します。話すことで、自分だけの「日常」の経験に、だれかの異なる見方を得ます。しかし、嫌なことも、楽しかったことも、何気ない「日常」の経験は忘れやすいです。「日常」を残す方法を考えた時、「絵」と「言葉」にすればいいと気づき、印象的な出来事を一話ごとのエッセイ漫画にして、その都度ウェブで公開しました。公開することで、他者と共有ができます。また、展示においては「日常を描く空間」を表現しました。壁のラフ案や机上の清書に触れることで、鑑賞者の持つ「日常」についても、改めて考えてほしいです。
筒井 由佳
デザイニング・エモーションゼミ
小学生の“あの頃”夢中になった懐かしいもの…ふだん忘れてしまっていても、一目見ただけであの頃の記憶を思い出せてしまう印象的な7つのジャンルから各20種類ずつを厳選し、合計140種類のイラストレーションファイルを制作、展示と配布を行いました。ネガティブな印象ばかりが先行する1987年~1996年生まれの「ゆとり世代」に向けた、人と共有することで生まれる、懐かしさの追体験ができる場と共感のデザインが私の卒業研究制作です。
TU Kuan Chen
ワークショップとインタラクションゼミ
アメリカには「エンディングに爆発を入れるとよりよい作品になる̶ “ Better to End with a Bang”」という俗語があります。この言葉をきっかけに、卒業研究制作のテーマを「爆発」にしました。一般的に「爆発」とは、人々に恐怖や危険といった印象を残しますが、私は逆に、爆発する瞬間の魅力、興奮感や楽しさを表現したいと考えました。爆発映像が立体に見えることにより、リアル感を与えつつも安全に鑑賞できる3D 立体装置の作品です。
冨永 裕美
エンタテイメントとデザインゼミ
「楽しいものを作りたい」という漠然とした思いから、制作を始めました。アニメーションが映る画面とジオラマを組み合わせ、ジオラマにある列車を動かすことによりアニメーションが進んでいく、インタラクティブ作品です。鑑賞者が作品に触れ、参加してもらうことで成り立つような作品を制作したいと考え、このような形態にしました。「何だかよく分からないけど、でも楽しい」作品ができたと思います。ジオラマは、発泡スチロールやダンボールを土台に、着色した紙粘土をヘラで形を作りながら貼付けています。ちびっこはお家でやってみてください。
中澤 光
ワークショップとインタラクションゼミ
「よこはま絵便り」は横浜で生まれ育ち、長い時間を過ごしてきた人だからこそ知っている、横浜の魅力をイラスト化し、レターセットやワークショップに活用することで地域の自慢や誇りを発信する作品です。1年間地元である横浜でフィールドワークを重ね、多くの人と出会い、十人十色の地域への誇りや自慢を集めてきました。その要素をもとに描いたイラストをレターセットにし街の人に使っていただくことで、改めて地元の魅力を感じてほしいと考えました。またその手紙を出すことで、横浜の新たな魅力を横浜外へも発信することができる作品となりました。
浜口 美里
デザイニング・エモーションゼミ
私たちが日々何気なく過ごしている、変わらない日常。毎日、同じ道を通り、昨日と同じような作業をして生活をしています。同じ視点で送る変化のない日常は退屈なものです。しかし、もし日常的な動きを探求することによって、いつもの日常に新しい景色が生まれ、新たな発見をすることができるのならば、変わらない日常が尊く美しいものに見え、非日常的な感じ方をすることができるのではないでしょうか。視野を広げ、日常の動作の中にさまざまなカタチの美しい軌道が隠れていることを、この作品を通して気づいてもらうきっかけになってほしいです。
原 清楓
エンタテイメントとデザインゼミ
私は卒業制作でアニメーションを作りたいと思い、そのテーマに動物園の動物を選びました。リサーチのためにいろいろな動物園に行ってみると、どの動物園でも動物が檻の向こうのとても遠い所にいたり、人ごみを隔てたりしているので、目の前にいるけどあまり身近に感じられないように思いました。そんな動物たちの身近にいる存在である、動物園の飼育員さんに、直接動物園の裏側を案内していただける機会があったので、その体験や聞いたお話をもとに、動物がもっと身近に感じられるようなアニメーションを作りました。
日野浦 文彩
サービス・デザインゼミ
スーツを採寸、試着する時に姿勢を整えてみると「スーツと姿勢が結びつく」ことに気づきます。しかし、姿勢を意識するきっかけは日常生活だと少ないと思います。そこで「姿勢を意識するきっかけとなる体験」を制作しました。スーツを着ると少し緊張し、背筋が伸びます。日常の中で少しでも姿勢を意識しやすくなる瞬間がフォーマルな「スーツを着る時間」だと考えました。スーツを購入する時に姿勢を整える「しせいしき」を体験することで、購入したスーツを着るたびに姿勢を意識できるようになります。
平谷 友香
エンタテイメントとデザインゼミ
小学校時代に焦点をあてて、その時使っていた言葉や道具を思い出してもらうゲームです。昔のことは、今でもすんなりと思い出せるものだったり、あるいはそれがあったこと自体すっかり忘れていたということもあったりするでしょう。すっかり忘れていたにもかかわらず、ふたたび目にしたというものがあると、自分がそれをちゃんと覚えていることに驚きや感動を覚えることができます。このゲームに登場するものに対して懐かしいという情動を起こし、昔のことでもきっかけがあれば思い出せることを再確認してもらうのが目的です。
深谷 菜生
デザイニング・エモーションゼミ
366日のそれぞれのページに、100人の人物を選んでその日付に書いた過去の日記を再構成した日記帳です。過去の人たちの日記を見てみると、過去の人も、私たちと同じ日付という感覚の中で、同じように生きているということを垣間見ることができます。日記には書物的側面と、自分の日記を読み返す読み物的側面があると思いますが、読み物的側面にもスポットを当て、自分が書いてきた過去の日記だけではなく、明日明後日に過去に書いた人の日記が書いてあり、同じ日付を生きた過去の人たちに想いを馳せながら日記を記すことができます。
ーアイデアが生まれたきっかけは?
もともと三日坊主をテーマに考えていました。私の中で三日坊主の代表例が日記でした。三日坊主にならない日記を考えている間に、周りの人に日記についていろいろ聞いていると、そもそも日記は現代に生きる私たちだけでなく、日本では平安時代頃から続く文化の一つなんだという考えにいきつきました。そんな過去の人たちや偉人たちは、おとぎ話の中にいる登場人物のような気がして、実際に生きていたということを実感しづらいですが、日記という媒体を使うことによって、その人たちの身近な出来事や感じていることが、私たちとなんら変わりないということを思ってもらえるのではないかと考え、この日記を制作することにしました。
wimp423
メディアとデザインゼミ
私はキャラクターのヴィジュアルメイキングを考察した制作を行っています。キャラクターを分解し、ドローイングしていく中で、キャラクターは記号的表現の集合体だと気づきました。最終成果物は、アニメーションの動作表現に着目しています。カートゥーンの時間軸から、静止画に落とし込み変形することで、キャラクターの特徴的な動作を摘出し、拡張しました。一つの構成要素に絞り重点を置くことで、面白い表現ができないか模索しました。
ー制作にあたって影響を受けた作品や言葉は?
とりあえずドローイングをすることから始めたのですが、きっかけをくれたのはJames Jarvisによる展示からでした。彼のコンセプト文が私のスタートをきってくれました。一部紹介します。「僕は“特徴”のないキャラクターを描こうとしているんだ。…このやり方で絵を描くことによって、目的としてよりも手段としてドローイングのアイデアに忠実なカートゥーンを作ることができる」。_James Jarvis『NO MORE NEGATIVE SPACE』HHH gallery,2015年過程を見ることができるドローイングの展示が面白かったですし、何より彼がキャラクターを抽象的概念として扱っていることにとても興味を感じました。
Talkartoons - Dizzy Dishes [06:05-06:06] お辞儀 / bowing ̶Talkartoons『Dizzy Dishes』 Fleischer Studios,1930年 02 / Merrie Melodies -Falling Hare [03:58-03:59] 滑る / slipping̶Merrie Melodies『Falling Hare』Warner Bros.,1943年 03 / Tom and Jerry-Puttin’on the Dog [03:48-03:50] 引っ張る / pulling̶Tom and Jerry『Puttin’ on the Dog』Metro-Goldwyn-Mayer,1944年
藤本 拓
メディアとデザインゼミ
戦後の住宅不足により生まれ、標準設計という名の規格化された住棟が連なるニュータウンは、当時の時代風景と画一化の象徴といえます。私はデザイン・フィクション手法における未来の映像コンテンツとして、そのニュータウンの未来の姿と、その時代におけるニュータウンの問題を表現しました。ニュータウンの問題とは、高齢化や人口の減少、開発整備の停滞による住棟の老朽化などを指します。デザイン・フィクションとは実物化、製品化よりも実践とプロセスを見せることに偏った、プロトタイプ理論に基づいた制作手法です。
ー作品から感じてもらいたいこと
技術の発展と共に、日常で目にする情報は増してきています。そこから情報を整理し、未来を予測をすることも容易になってきています。未来に起こりうる問題を予測し、今のうちから解決することで、その問題は慢性化せず「現在起きている問題」として考えることもできます。この概念の重要性を伝えることがデザイン・フィクションの役割の一つとして挙げられると考え、私の作品にもメッセージとして反映させたつもりです。つまり、供給過多になりつつある情報を能動的に整理することと、そこから何が予測できるのかを見つける大切さ。私の作品を通してそれが伝わったのなら、私の作品は最高の結果を残せたと言えます。また、そうでなくても、この作品から何か惹き付けられるようなものを感じていただけたら幸いです。
舟本 未緒
サービス・デザインゼミ
私は自分自身の食事習慣から、家族との食事には何かしらの特別があるという前提で、家族の食卓について考え始めました。しかし実際は、家族と食事をしても“特別な何か”はなく、会話に糸口があると思い観察しても会話と会話に変な間があったり、質問に対する返事が次々と変わったりと失礼な会話ばかりでした。そんな失礼な会話ですが、そこには相手が家族だからこその気の緩みや安堵感があり、家族でないと生まれないものが存在しています。私は家族で食卓を囲む中生まれる会話が面白いと思い、動画で表現してみたいと思いました。
松島 美紗子
ワークショップとインタラクションゼミ
日常のものであるのに「午前3時」であることでどこか特別に感じるものや、「午前3時」にしか見ることのできない物事を記録し、残し、伝えたいと思いました。「午前3時」を知らない人には「午前3時」にどういった生活があるのかを知ってもらい、発見し、特別感を得てほしいです。「午前3時」を知っている人には共感して楽しんでもらいたいです。
峯岸 右蘭
メディアとデザインゼミ
私は追っかけをしているバンドがあります。最初は曲が好きなだけでしたが、メンバーやCD、オフィシャルグッズ、トレイラーなども大好きになりました。それらを含めた、バンドを取り巻くすべてのものがそのバンドを形成しているのだと気づいたからです。私は曲作りはできないですが、曲を作り続けるミュージシャンへの自分なりの関わり方として、擬似的にミュージシャンになることで新たなデザイナーの可能性が見出せると考えました。これを機にミュージシャンとデザイナーとの融合がさらに深まり、観客をより感動させることができるような力をつけたいです。
宮森 梨瑳
エンタテイメントとデザインゼミ
目の錯覚、脳の仕組みの原理を利用した「だまし絵」を使ってインタラクティブな作品を制作しました。「だまし絵」によって起こる、ものの見方の不思議な体験を手軽にできるような作品を作りたいと考えました。それぞれの画面にだまし絵のアニメーション、説明文がつきます。「だまし絵」のアニメーションはタッチすることで変化します。自分の特色を出すために、好きな色で「だまし絵」のイメージを統一させる作業を行いました。また、もとの「だまし絵」の仕組みは変えずに、色合い、図形の形など表現方法を変えて差別化を図りました。
武藤 夏悠子
ワークショップとインタラクションゼミ
犬の目線から見た日常を表現したアニメーションです。ストーリー性のない映像で見ている人の日常に溶け込み、パステル調の配色でぼーっと見ていて癒されるものを目指しました。この作品を見ることで犬になったような感覚を起こし、犬の気持ちを考えるきっかけになればよいと思っています。犬の気持ちを考え、犬や動物の命も人間と同じ重みがあることを感じてほしいです。今回は人間が犬になった設定で制作したので、目の見え方や音の聴こえ方などは人間に設定しました。
宗像 悠里
メディアとデザインゼミ
人は、顔という“テクスチャ”をまとっています。眠そうな目蓋も、はにかんだ口元も、変なところにできたホクロの位置さえも、すべては、たまたま付いてきた表層に過ぎません。にも関わらず、それは自己を形成する根源となり、今のあなたをつくりあげています。確かに、考え自発的に行動しているはずの自分が単なる“テクスチャ”であるならば、顔の影響を受けず、自立した意思としての自分は、もしかしたら始めから存在しないのかもしれません。今朝、鏡を覗き込んでいたあなたのその顔は、果たして本当にあなた自身だったのでしょうか。
諸橋 由紀恵
デザイニング・エモーションゼミ
過疎化が進んでいる地方の小規模企業では、今後どのように廃業していくかが問題になっています。地方の小規模企業である諸橋製麺所は、後継者がおらず、将来的に廃業しようと考えています。しかし、消費者にとって廃業という言葉は負のイメージが強く、企業自体もそのようにとらえられる可能性があります。そこで、廃業する際に地域住民から惜しまれつつも美しく終わりを迎えるために、企業が消費者の記憶に残ることが必要であると考えました。諸橋製麺所の年越し蕎麦をデザインすることは、諸橋製麺所が記憶に残るきっかけに繋がることになるでしょう。
矢口 真理子
ワークショップとインタラクションゼミ
この作品の制作中に行ったフィールドリサーチやこれまで国内外の美術館で得た体験や気づきを通して、美術館利用者たちの“学びの多様性”というものに気がつきました。それらを素材とし、“今日の美術館の現状を知ること”と“本来の目的である既存の作品を知ること”を組み合わせ、単に美術館にいるだけでは気づけない様子まで可視化したイラストレーション作品を制作しました。これらを通し、利用者が自身の美術館での学びについて意識し考えるきっかけづくりとして提示します。
ーアイデアが生まれたきっかけは?
大学1年次に初めてルーブル美術館などの海外の美術館へ行きました。その時の体験が今回の卒業研究制作のきっかけとなっています。日本と違い、本物の作品を前に大きなイーゼルを持ち込んで模写をしたり、デッサンをしたり、館内をスケッチしたり、作品について語り合ったり、学びの場としてとても過ごしやすい空間でした。また、その時の一番の思い出として館内をスケッチしていたフランス人の方といろいろお話しできたことがあります。たまたま声をかけてもらいお互い拙い英語で日本のことやアートのことなど、さまざまなことを話しました。こういったアートをきっかけに人との出会いがあったことも大きな影響です。
これらのイラストレーションは、展覧会場に作品を観に来る人を名作になぞらえて描くことで、美術館や博物館を取り巻く問題を人々に再認識させることを狙ったものです。 「今昔美術館俯瞰図」は兵庫県立歴史博物館収蔵の「源平合戦図屏風」(江戸時代前期)を元に作成しています。 https://www.hyogo-c.ed.jp/~rekihaku-bo/historystation/rekihaku-meet/seminar/etoki/ext/sp5.html(2016年2月29日アクセス) 「鑑賞はお静かに」はルーブル美術館収蔵のハンス・メムリンク作「聖ヤコブと聖ドミニクスの間の聖母」(1488年~1490年頃制作)を元に作成しています。 「埋まらない壁と見えない床」はルーブル美術館所蔵のジョバンニ・パロオ・パンニーニ作「現代ローマの景観図ギャラリー」(1759年頃制作)を元に作成しています。
谷島 誠一朗
メディアとデザインゼミ
日常の中の身近な不思議、自分にしか見れないもう一つの世界。私はそんな夢の世界に幼い頃から興味を抱いていました。夢を見ることのメカニズムや「なぜ夢を見るのか」は未だに解明されていないそうです。しかし、私は「なぜ夢を見るのか」それを解明するなんて、夢がないことだと感じます。この作品は、私が見た夢の内容に関するキーワードを展示し、私自身の夢の世界と、その一種のバイオリズムを感じてもらえるよう制作しました。科学で解明される前の「夢のまま」の世界を感じてもらえれば、と思います。
ーアイデアが生まれたきっかけは?
私は夢の中では常に自分の欲求に素直でいられます。夢の中は自由です。なので、私は常日頃から、できることならずっと夢の中にこもっていたいと思っています。私は「卒業研究制作」という現実を前にした時、「夢の中にこもりたい」という欲求しか現れませんでした。そこで私は考えました。「卒業研究制作を夢の中で行えば夢から出なくてもよいのでは?」われながら天才的発想だと思いました。これでもう私は夢から出てこなくてもよいんだ、ずっと夢の中で暮らすんだ、と当時はそう思っていました、当時は。しかし、現実は容赦をしませんでした。「提出」という課題をクリアするためには現実世界に作品がなければいけません。そこで、考えに考えた末に出した結論が「夢でみた風景や情景を写真にすること」でした。「写真」を使用し、写真作品を「夢」というテーマで制作する。これにより、撮るべき写真は夢が勝手に決めてくれる。そうして、私の卒業研究制作は「寝ること」にすることができました。
山田 遥
デザイニング・エモーションゼミ
「Kidoufu」のコンセプトは、「人体の関節可動域の軌道で紡ぐ、五線譜を視覚化した映像作品」です。人体の部位の角度や位置を音楽の一音一音に合わせて一つひとつ紡ぎ、人体と音楽の軌道の変化を視覚化した映像作品です。画面の左からピアノ、ベース、ドラムと一人一つの楽器を担当し、それぞれの一音に合った軌道を紡いでいき、音が軌道によって視覚化されています。音楽と軌道の流れを目で楽しんでいただけたら幸いです。
ーこれまでの自分に影響を与えたこと、今の自分に繋がっていること
私は大学からダンス部に所属しており、ワック以外にもたくさんのジャンルを経験したことで、映像作品において1フレーム刻みの扱いに多大な影響を与えられたと感じています。例えば、すべての音を使うのではなく「音を捨てる」といった発想はパフォーマンス面で培われたものです。その他にもダンス部では、主にワックの振付師としていくつかのショーケース作品を作り、イベントで披露していました。そういったさまざまな経験が卒業研究制作に影響している気がします。また、ダンス部での作品も映像として残っていますので、よかったらR-jamovieで検索してください(笑)。
山村 侑希
エンタテイメントとデザインゼミ
山手線は、毎日利用するならまだしも、全く降りない駅、ただ通過するだけの駅など、電車が好きな人でなければ、そこには一体何があるのか知らない人が多いです。そこで山手線29駅の各々の魅力や、自分が行って発見したものをまとめました。それに基づき、親子や友達同士でミニ知識を交えながら山手線各駅について学べて遊べる知育玩具を制作しました。山手線を身近に感じ、その駅に行った時に同じものを探してみたくなるような作品です。
山本 アンディ彩果
メディアとデザインゼミ
祖父が大切にしていた「もの」たち
いつもだれかのためのものを作っていた工具
祖母が大切にしていた裁縫道具
彼が60年間撮り続けた家族の写真
私が贈った花
しかし今どうしてここに存在するのかさえ
もう彼には分からない
その物語を読む術が分からなくなってしまった
私は祖父の代わりに何度も物語を語り聞かせる
繰り返される私の声は彼の文字にもなれない
忘却の波をせきとめられる術にもなれずに
白い結晶や、からみつく細い糸になり読めなくなった物語を包む
二度と読めなくとも、ここにあるのは幸せな
甘い物語だったのだと証明し続けるように彼に寄り添う
ー選んだ媒体や表現方法のこと
「砂糖漬け」という技法があります。花や果物を砂糖でとりまき腐敗を防ぐ保存技法です。認知症になった祖父と、忘れられた祖父の大切にしていたものたち。忘れゆく人と、忘れられゆくものへの「守りたい」という私の強い想いを体現化するために、この技法を使い表現をしました。亡くなった祖母が使いかけていた糸や、私のベビーベッドに使われていた小さなネジ、家族を撮った写真の大量のポジフィルム。認知症になった祖父は、自分が大切に大切に残してきたものたちを指差し「これは何だ。どうしてここにある」と私に尋ねます。それはまるで大切なものと自分との物語の文字が突然読めなくなってしまったかのようでした。祖父が人を愛し、生きた人生を証明するものたちが、その輝きを失ってゆく。それと共に祖父の人生も輝きを失っていく。私は、ものと祖父を守りたいと強く思いました。その想いが忘れられた記憶の物語を守ろうとする様を「砂糖漬け」にすることで表現しています。本当は祖父の忘却を止める術を持ちたかった。祖父の読める新しい文字になりたかった。しかし、ただ寄り添うことしかできない。さまざまな形に変容した脆い結晶にその切なさを感じてもらえるよう制作しました。
吉川 未夏
サービス・デザインゼミ
みなさん、お薬を最後まで飲んでいますか?服薬中に飲み忘れてしまう人の割合は半数以上だそうです(日本調剤株式会社による調査)。主な原因は飲む時間を忘れやすいことや、情報過多などがあげられます。そこで、常に携帯するiPhone、iPadのアプリにすることで、服薬管理が簡単に行えるようデザインしました。このアプリは一元化されていない処方箋の情報をまとめ、患者一人ひとりが「チェックする→成果がでる→また飲もうと思う」この一連のサイクルに沿って行動することができます。自主的に服薬に取り組めるようなUIデザインを心がけました。
渡邊 未央
サービス・デザインゼミ
「動物園で動物を見ている人を観る」をテーマに、観察した人の服装や持ち物、しぐさ、景色、一緒に来ていた人をイラストレーションで表現しました。ひそかに後ろから観ている観察者の視点を感じてもらえるように、人物はあえて顔の見えない後ろや横などの顔がはっきり見えない構図で統一しています。人物を観察しているうちに一人ひとりに愛着がわき、温かみのある表現にしたかったのでつけペンやコピックなどの手描きで描くことにこだわりました。
伊藤 亜耶
エンタテイメントとデザインゼミ
視覚障害児用の教材は現在さまざまな種類のものが研究、開発されています。中でも触素材を用いた触覚教材は、視覚障害のある子供に幼いうちから触れさせることによって触覚によって情報を得る能力を高めるのにも役立ちます。しかし触素材を使った触覚教材は制作に手間がかかるため、広い普及には至っていません。そこで卒業制作では特別な知識がなくても手軽に制作のできるさわる絵本の制作手順の開発と、普及のためのウェブサイトの制作をしました。