UPDATE: 03.03 / NEXT: 03.04

きになるゼミナール二限目は、メディアとデザインゼミ(通称:永原ゼミ)。
永原康史先生ご指導のもと、13名のゼミ生で構成されています。
今回5名に集まっていただき、ゼミについてお聞きします!
多摩美の最寄り駅、橋本駅周辺でインタビューをさせていただきました。



 
まずはじめに、ゼミの進め方はどんなものだったか教えて下さい。
鈴木 週に1度あるゼミの中で一週間自分がやってきたことを発表してました。
みんなから意見もらったり、先生にヘルプ!ってアドバイスをもらったり。
それに「すみません、今週は進んでません…」っていうのもある…
山幡 やっぱり、作品がどうなっていても
とにかくゼミに行ってみる!ってのがあったんじゃないかな。
進んでない場合はどういうアドバイスが?
山幡 うーん…やってないことについて言われるというよりは
何でやっていないのかを聞いて、
じゃあ次進めるためにどうしたら良いか
アドバイスをくれたりするよね。
山崎 そうだね。
やってないというよりは手が止まっちゃってて、
どう動いていいかわからなくて…それを先生と話しているうちに
「ここがつまずいているポイントだからじゃあこうしてみたら?」って言ってくれる。
山幡 ほんとにレパートリーが広いです。
鈴木 「辞書」だよね(笑)
なんでも知ってるというか。
山幡 例えば有吉君なんかは見たほうが良い展覧会薦めてくれたり
っていうのもあったね。
作品がどうだっていうよりは、
インスピレーションもらえるよって
色んな情報を教えてくれたり。
廣瀬 その人にオススメのデザインとか…
書籍も教えてもらったこともあります。
なるほど。卒制というよりは、その人の思考に対してのアドバイスしてもらったという感じでしょうか。
鈴木 それに加えて知識みたいなところも。
こういうものがやってみたいという曖昧なイメージに対しても、
これはこういう技術だねって教えていただきました。
山幡 でも、そんな感じで色んなこと教えてもらうんだけど、
こういう作品にしなさいっていうのは無いよね。
有吉 うん、絶対ないね。
山幡 こういう進め方して、
結果出来上がったものがコレみたいな。
作り方のほうにアドバイスもらうことが多い…?というか。
山崎 生徒本位に導いてくれてる…?というか(笑)
山幡 うんうん、そうだよね(笑)
先生からも「最終審査会はとにかく制作しかありません。この時期はカウンセラーのような仕事だと思います」とコメントがありました。
山幡 ああ!確かに人生相談みたいになってた!(笑)
一同笑い
鈴木 ほんとカウンセラー!(笑)
あとは自分で進めるだけなのに
「でもここがあーでこーで…なんかちょっとここも嫌で…」ってなってると、
先生が「いいじゃん!」「うーん…いっか☆」
みたいになっちゃう。

<ゼミでの進め方で取り入れているもの(方法など)を教えて下さい。>

毎回、各自が、進展をプレゼンテーションする。

前期審査会まで:
リサーチを中心に、制作テーマを決めていきます。
プレゼンテーションというより、ぼくと対話をする感じ。
この時期が肝ですから、根掘り葉掘り聞き出して、
きちんとコンセプトがたった制作になるように土台を作ります。
今年は、プレゼン練習のための合宿も行ないました。

中間審査会まで:
夏休みにあたるこの時期は、
制作に必要な技術を学び、資料を収集しながら、実作を進めていきます。
(が、なかなかうまくはいきません)
恒例の夏休みゼミは神宮花火の日です。
ゼミのあと花火を見て、そのあとの飲み会までが恒例です。

最終審査会まで:
ここはもう制作しかありませんから、ぼくは話しを聞くだけです。
多少のアドバイスはますが、この時期はカウンセラーのような仕事だと思っています。
方向がぶれないように注意して見守りながら、
着地できるように軌道を整えます。
では次に、先生がおっしゃっていたことで印象に残っている言葉があったら教えて下さい。
有吉 あります。
俺は先生に2年生のときから見ていただいてたというのもあって、
「とりあえず有吉君は何も考えずに作ってください」とハッキリ。
それでとにかく手を動かして…
そのおかげもあって興味があるものを見つけられたのかなって思います。
自分だけじゃなくて手の遅い人にはみんな「とりあえず手を動かしなさい」
だったかな。
山幡 決まったセリフというよりはそれぞれの特徴というか…
各々が必ず言われていることがある。
俺もそうで、内面ばっかり考えるのが好きでプレゼンばっかりしてたんで、
やっぱり「作ったほうがいい」っていうのは
ずっと言われてました。
鈴木 私は「そんなところで悩んでないで作りなよ」って。
山幡 うん、やっぱり個々へのアドバイスが思い出されるね。
全体に向けてみなさんにお話されたことよりも、先生と1対1でやりとりをしていた時のことが出てきますね。
山崎 そうですね。
鈴木 やっぱり途中からゼミが
先生との1対1になったっていうのもあるよね。
廣瀬 ゼミの時、誰かが発表しているときは作業を進めていても良いんです。
でもちゃんと耳を傾けておくというか…
全部聞いて、自分の中で納得していたり。
山幡 まったく同じこと思った。
発表者が先生にこうやって進めたらいいよっていうのを聞いて
心の中でなるほど確かに、みたいな。
先生からのコメントでも「個々として接している」というのがありました。他にも学生それぞれに対しても具体的にいただいています。
一同 コメントを見る
山幡 すごい…八百長なんじゃないかってくらい
俺らが喋ってたことそのまま(笑)
山崎 あ、そっか。
テーマに悩んでいたときはわからなくて良いってアドバイスだったかも…
うんうん確かに。
有吉 例え話……ああ!「ねじを締める話」は?
一同 それだね!
それはみなさん共通のエピソードなんですか?
有吉 はい。
先生は本やエディトリアルに詳しいんですが、
本を振っても文字が落ちてこないような本をつくる
っていう話をよくしてました。 制作でも、最後の最後にねじをキュッと締める作業が
必要だよっていう例え話です。
山崎 そうだね、色んな場面で何度も言ってた。
作りっぱなしはダメだっていうことだよね。

<ゼミ生に向けて意識して言ってる、使っている言葉を教えて下さい。>

「ゼミ生」とひとまとめにして考えたことはない。
個々人として接しているつもり。
でも、意識して言う言葉はあります。

(なかなか手が動かない人に)
それでいいよ。作りながら考えよう。

(自分のテーマに悩んでしまった人に)
今の段階では、自分が何をしているかわからなくていいんだよ。

(社会性を気にしだしたら)
役になんか立たなくてもいいじゃない。

(インタフェースとか気にしだしたら)
使いやすくとか考えなくていいよ。

(観る人、使う人のことを考えはじめたら)
伝えたいことが伝わっているかどうかより、伝えたいと言う気持ちが伝わる作品にしてください。

(審査会後)
講評は、あまり気にするな。

わかりにくい例え話をしながら、
わりとだらだらしゃべることが多いです。
最後に審査会を含め、ゼミ1年間を振り返っていかがでしたか。
山幡 コミュニケーションが多かったなあって思う。
鈴木 ゼミで何か作って、食べて、ね(笑)
そうめんやったり…キッチンで鍋やったり。
作ってきてくれたお菓子でお茶会しながら食べたり。
その中で発表を聞いたりっていうのもあったよね。
山幡 …でも、それぞれの作品に良い意味で干渉はしてない。
有吉 ああー、それあるかも。
山幡 先生と1対1でやりとりしてて、
でもみんな耳でちゃんと聞いてて。
ある日突然この人は本当に違う方向いってて
ピンチだ!ってなった時に人がワッと集まる。
助けが必要なタイミングで
意見言ったりする感じだったね。
山崎 デザインの目標が、人の役に立つ、誰かが使うということよりも
「自分が何をしたいのか」を突き詰める人が多かった気がしてて…。
人が入り込めないようなものだから
先生と個人という形になっていったのかなと思います。
内面にあることを表現していく、ですか。それはメディアとデザインゼミならではかもしれないですよね。
山幡 山崎さんが言うように、それぞれで思想みたいなものがあるから
試作が出てくるまでは耳を傾けてる状態が続いて…
やっぱり何も言わないほうが良いんじゃないかって。
廣瀬 その人が一番作品に対して時間かけて考えてるだろうし、
そう思うと簡単に口出すことが出来ないなっていうのはありました。
鈴木 そういえば
メディアとデザインゼミはほんと意味わかんないもの作るね~
って言われた(笑)
山崎 うん、先生本人もそういうこと言ってたかな(笑)
山幡 審査会だけ見た人は何でこういう形になったかってのは、
ほんと意味わからないかもしれないよね。
ゼミで考え方やプロセスの発表を聞いていたから
考え方が一貫してるのはゼミメンバーみんな知ってるけど…
がらがらアウトプット変わっていってる。
表現方法をずっと模索してたわけだし、
当たり前といえばそうなんだけど。
アウトプット(作品の形態や表現方法)がどんどん変わるというのは情デらしいところでしょうか。
山幡 やっぱ中身メインなのは確かだよねー。
今自分で話してて思ったけど。
相当、何を伝えたいかを中心に考えてる。
廣瀬 私は休むことをテーマにしてて、
最初はノベルティを作りたかったのに最終的に「流木」になってる…
山幡 確かに。
休むことの方法は廣瀬さんのゼミ発表で色んなバリエーション見たよね。
…でも結論だけ言ったら、「まあ流木になるよな!」って思うもんね(笑)
たどり着くところにたどり着いたんですね…!
有吉 でも、永原先生じゃなかったら
ノベルティ作ってたかも…って思った。
!!そうなんですか?
有吉 やっぱり伝えたいことを優先してものづくりしていかないといけない
っていうのがゼミを通じて思っていたことで。
うまく言えないですけど…
審査会の他のゼミの人の発表でで永原先生の講評を聞いてて思ったんです。
今までのカテゴリーにはまるようなものじゃなく、
“片鱗でもいいから卒制の中でひとつかけらを見つける作業が必要です”
って先生は言いたかったのかなって。
その何か新しい価値を作りたいって思い続けてた理由は、
その時言っていたコメントで納得出来たというか。
なるほど…素直に感動しました…! 「伝えたいこと優先」というのはメディアとデザインゼミだからこそというか……
山幡 ま、他のゼミを受けてないからなんとも言えないですけどね!
一同 ええーー!!
山崎 ここで!?(笑)
いや、そんなことないです!それぞれの作品を思い返してみても、
やっぱり全員がこのゼミに入るべくして入ったメンバーって感じがする。
山幡 うんうん、それほんとに…そこが強いゼミだと思うんです。
良い話ばっかり出たところで追加で言っておくと、
飲み会はなかなか派手ですよ☆
一同 またここで!?(笑)

<全3回の審査会を終えて、一年間を振り返ってみての感想を、
ゼミ生に向けてお願いします。>

反省会で伝えました。
それが全部です。
きちんと伝わったと思います。

ひとつだけ。
ゼミはチームですから、役割分担が必要なんです。
そういう意味で、今年はとてもいいチームになりました。
いいメンバーに恵まれ、本当に気持ちのいいゼミでした。
どうもありがとう。


メディアとデザインゼミは「伝えたいこと」を最優先に取り組んでいるということが、
今回のインタビューから一番色濃く感じられました。
先生も作品の出来上がりの指導だけでなく、
どういった風に着地させてあげるべきかを考えているというのも、
メディアとデザインゼミらしさを生んでいる特徴の1つかもしれません。