UPDATE: 03.05 /LAST UPDATE

きになるゼミナール6限目は活動を基盤とするデザインゼミ(通称:須永ゼミ)。
須永剛司先生ご指導のもと、6名のゼミ生と、研究生1名、
そして1年を通して須永ゼミでも活動していた他ゼミ参加者が1名の
計8名で構成されています。
今回はその中で4名に集まっていただきました!
多摩美の建物の中で象徴とも言える多摩美術大学図書館でインタビューしました。



本日はよろしくお願いします!
まず、活動を基盤とするデザインゼミで取り入れている方法や
ゼミの進め方を教えて下さい。
戒能一番最初はブートキャンプ…あれが効いてたなあと。
須永ゼミを知ろう、というかゼミ生みんなでやるグループ課題をしました。
松村最初に、「ゼミ内で使えるSNSをデザインする」っていう課題がブートキャンプで出て…
みんなでゼミで必要なことってなにかなって話をして。
その中で、一回ゼミに欠席をした人は置いてけぼりになっちゃったり
ゼミについていけなくなっちゃうなって。
ゼミに来れなかった人に、どうゼミであったことを伝えるかを考えるSNSを作ることにしたんだよね。
新野4年生になって、全く新しい進め方をしようっていうのでそのブートキャンプをやったんです。
えっと、ブートキャンプって結局のところ…なんですか?
ゼミ強化合宿的なものですか?どこかで別の場所でやってたり…?
松村いや、そういうのではなく、学校で!
そういうゼミのイベントというか。
戒能須永課題、だよね。
駒田うん、卒業制作とも関係なしに。
戒能他のゼミって、卒業制作のきっかけにマインドマップを書いてたりするけど…
僕らだけなんか…毎日学校来てSNS作ってた(笑)
休みの日も会議室借りたりしてやってたり。
松村うん。前期の卒制の発表よりもSNS中心で。
先生からも「SNS作りを一生懸命やらないと君たちは何も得られないよ!」って。
そうだったんですね…
前期は卒制は置いといて、ずっとSNS作りをしていたということですか…
戒能正直すっごい知恵熱出た…
その日覚えたことを覚えきれなかった最初だった。
先生の話を聞くのもいっぱいいっぱいだし。
先ほどから出てるその…「覚えきれない」っていうのは
どういう意味ですか…?
戒能すっごいいろんなことを先生から言われるんです。
キャパを完全に超えてた・・・!
一同笑い
松村やっぱり根本的なことが違うっていうのはずっと先生から言われてて。
でも私達もわからなくて、表面上のところを直して持って行って、 また違う、みたいな。何回も、ね。
そんな前期を経て、後期の卒業制作の作品づくりはどうでしたか?
駒田まずはテーマを考えるところからなんですけど、
情報デザインを色んな人に知ってほしい!とか、僕は世界をこうしたい!とか。
松村…と言うと、先生に『too bigだよ~』って。
新野僕らはどっちかというとテーマが広すぎて定めきれないって言われて…
駒田君は逆に電車の窓のインターフェースがやりたいって言っていたんだけど、
先生はそこから広がらないだろうって。
えっと、なんだっけ、too.....
松村「too concrete」!!
新野それだ。具体的すぎるって。
ゼミで何か試作をしたりして、ゼミではどういうかたちで進めていったんでしょうか。
何か発表のようなものがあったり?
新野毎週なにか課題だされるから、それを各自で作ってきて進めて、
ゼミで発表したい人から発表する。 
戒能その日ひとり1時間以上とったりするときもあって。
ホワイトボードに書いていった。とにかく文字を書いたなあ…
新野発表っていうよりは議論みたいな感じ。
僕がいったことに対して須永先生が何か言うし、いやこれはこうなんじゃないかって、その繰り広げられることを聞いて頭の中で想像する。
松村ボイスレコーダーでね…。
何を言われているか撮らないと次から次へと言われて。
ええーー!?そこまで!!すごい…!!
新野知識が豊富すぎてね・・・
松村わかんないから・・・辛い。(笑)
一同笑い
松村一日って1限2限…4限までしかないのに
1人に2限とったりしたらあとの6人がの残りの2限で済ませなきゃいけないってなって。
戒能じゃあ、あと30分でやろっかって(笑)
で、それほんとに30分でやって
『うん、じゃあこれをもう少し進めたほうがいいかな~じゃ、みなの衆お疲れ!』
ってふつうに帰る。
一同笑い
先生から同じ質問を事前にしていて、こんなコメントが届いています。
一同、コメントを読む
私は難しくて首をかしげてしまったのですが…
みなさんは「ああ、なるほど」って感じですか?
松村うん…、耳にタコです(笑)
新野いつも言ってる…(笑)
活動プログラム、とか。
戒能可能性空間、とか。
松村作品の「モノ」じゃなくて、その周囲・空間自体をどうにかしなさいって
いつも言われてた…。
あと、先生とふたりでしゃべってるときに、
「世の中をどうにかしなきゃいけないけど、世の中は絵に描いただけじゃわかってくれない。
だから君たちには文字で書けって言ってる。文字で描かないとわかってもらえないんだよ」
って先生がおっしゃってて。
なるほど…美大の中で育ってきた私達への言葉ですね。
戒能僕は毎回先生に、戒能は小学校4年生の文章力。
国語が出来てないから文章見たくないって・・・
一同笑い
駒田現実的に会社に入ればデザイナーだけじゃなくて
企画部とか営業とか色んな人がいて。
そういう人にデザイナーはこう考えてるって説明しないといけない。
どうせデザイナーは絵しか描けないでしょ?って言われる。
そうやって伝わらなくて勝手なものに変えられてしまうのがすごく嫌らしくて・・・
デザイナーも活動仕組みを、世の中を変えたいんです!って言えるような立場にしたいんだと思う。
自分で説明できる力を付けて欲しいって。
新野そのおかげですごく役だった。
言葉に気を使えるようになったし…すごく鍛えられた。
駒田それは世の中にわかってもらえる努力をこの一年間でし始めたってことなんじゃないですかね!
一同、拍手!!!!
松村止まらない、こういうふうに(笑) ゼミでしゃべってると次から次へとしゃべってくれるから…それが須永ゼミの良いところ(笑)
新野えっと、活動って~・・・
一同まだ言うんか!!(笑)
 

<ゼミでの進め方で取り入れているもの(方法など)を教えて下さい。>

須永ゼミがデザインのモチーフとして関心をもつのは、
人々が考えること、表現すること、対話すること、共感すること、理解すること、
そして人々がさまざまな活動を起こすことです。

それら人間の知的活動を支える道具やサービスのデザインを「本当にできるようになる」、
それがこのゼミのねらいです。

また、私たちは、新たな研究フィールドとして「活動プログラム」のデザイン、
つまり道具やサービスを利活用する人々の行為と関心の可能性空間を
形づくるデザインにもチャレンジしています。
先程から話題に上がっていましたが、改めて質問します。
先生がおっしゃっていた言葉で、印象に残っている言葉があれば教えて下さい。
駒田Team=100% of the solution、だっけ?
松村あぁー!あったね!
駒田要は、解決策は、チームじゃないと生まれないっていう…
みんな、卒業制作って個人製作じゃないですか。
でも、やっぱり一人は限界があるなって。
戒能なんか、そのためにゼミってあったなぁ、って。
こんなに、自分の作品のことを、他の人に相談したことってなかった。
新野うん、すごい相談した。
戒能そういう意味では、チームで作ってたんだなぁって思う。
松村だから、もし戻れるなら戻って、須永ゼミでグループ制作したら
すっごいものができてたんじゃないかなぁ、とかちょっと思ってて。
駒田それは本当にそう思う。でも、一年個人でやってなかったら気付けないかも。
松村確かに…だから、あと二年は、大学居たいって思う(笑)
美大の卒業制作のイメージって、一人一作品ってイメージがありますけど
情報デザインのデザインコースではグループ制作もOKですもんね。
駒田本当に、みんなの力で、それぞれのいいところを合わせて作りたい。
松村もっとよく出来たよね…って思う。
相手のをもっと良くできそうな可能性がどんどん見えてくるから…
戒能口出したくなる?
松村口出したくなる(笑)
一同笑い
戒能他にも、"design is hunting"とか…
すごい!狩りですか?
新野うん、ハンティングプロセス…
戒能そうそうそう、デザインは狩りの手順に似ているっていう。
確か、須永先生が外国の講演で聞いて感動した言葉で。
「深追いはするな」っていう…ある程度狩れたら、一回家に持って帰る。
深追いすると、やられちゃうから。
新野あとは、"Never go hunting alone"っていうのもあって…
一人で全てをやろうとしないで、仲間とやろうっていう。
松村脳を手に…ていうのもあったよね。手を脳みそに…。
戒能書かないとアイデアが発展していかないっていうことだったよね。
松村みんな考えるけど、書かないから…
書くまでブランクがあったりして。
私達もよく「お前たちは書かない」って、ゼミの時にいわれてて。
戒能最後の浅野さん(須永ゼミ生)の書きっぷりはすごかったね。
松村神がかったね、最後。
戒能すっごい良くなったもんね!
松村やっぱり、脳は手なんだな、手は脳なんだなって思ったな。
新野実際、書いた人は進んでるもんね、すごく。
新野あと、オレがすごいなと思ったのは、ゼミの中で否定意見が殆どでなかったことで。
みんな出たアイデアに対して、どんな拙いアイデアでも「こうしたらもっとよくなるよね」っていう
肯定的な意見しか出てない。
これはダメだ、って切り捨てちゃう人とかがいなくて。
新野それってたぶん須永先生の方針もあると思うんだけど、
よくおっしゃってたのが「クリエイティブなものに、否定はないんじゃないか」っていう。
「作られるものは、もっとよくなるしかないと思って作れ」っておっしゃってて…
でも本当にそうで、「ダメ」っていったら、
もうそこで終わっちゃうし…
もっとよく出来ると思えば、どこかしらなにか見つけられるし。
松村うんうん。でも「こうしなさい」とはいわれるよね。
新野あれはなんか、やり方に対してのダメ出しはあるけど…
作品の本質にダメ出しとかされない。
戒能あー、そういうことは一回もないなぁ。
すごく、須永先生って言葉に気をつけてて、ポジティブな言葉を積極的に使ってて。
それを聞いていたら、オレもなんか影響されて、
最近マイナスな言葉を使ってない。結構影響されてる。
松村戒能くんと、新野くんは、特に影響をうけてたと思う。一年間で喋り方が変わって…
戒能うっそ?
新野えぇー?例えば?
戒能…リッチとか?
一同笑い
リッチですか?
戒能先生のよく使う横文字を、咀嚼して理解しようとしていくうちに、だんだん自分でも言い出しちゃう時期があって(笑)
松村なんか、みんなで、「それ、リッチだね!」って。
戒能「それすごくリッチな経験だね~」って
一同笑い
戒能本当に、喋り方とか考え方とか、すごい影響うけたなぁ~って思う。反発するところも当然あったけど、それもまぁ含めて…。
ではこの流れで、事前にメールで頂いたコメントの紹介します。
「デザインは「構想し、造形し、設計すること」を意味します。…」
一同あぁ~!
駒田それ改めて読みたいなぁ。転送してくれない?
松村ほしい!
新野俺も俺も
 

<ゼミ生に向けて意識して言ってる、使っている言葉を教えて下さい。>

デザインは「構想し、造形し、設計すること」を意味します。
デザインの始まりにある構想と造形に必要なのが「subjective view」。
自分がその中にいる事態としてデザインの対象を捉えることです。
そこから経験の可能性を描くことが可能になります。
設計することには「objective view」がものを言います。
では最後に、審査会やゼミを振り返ってみて感想をお願いします!
戒能やらなければわからないってことがわかった一年間だったって思います。
松村審査会っていうのは先生の中ではあまり重要ではないみたいで…
あまり審査会ごとにどうだった、こうだったっていうのは思わないかな。
審査会を通してまとめられるきっかけになったとは思います。
最終審査会に向けて、自分たちがやっていることをどう伝えるかを9月くらいから先生もずっと言ってて。
作品はもう10月で終わらせて、自分のやってることをいかに伝えるか。
戒能自分がやったことにどういう価値や意味があるか…
世の中に対してこういうことが出来るんだぞ!って言えるのかをとにかく考えたし… すごく悩んだ。
松村いまだにこれでよかったのかと思う…
これすごいでしょ、きれいでしょって作品じゃなくて、
人が見たら一見つまらないと思われる作品が多い傾向があって…
それをどう相手にわかってもらえるだけの価値にするのかっていうのが最終審査会での課題でした。
新野こうやってやってることが、何故良いのか、いかに良いのかを
自分で言えるようにこれからはならなきゃなと。
端から見たら、何だこいつら難しいことやって文章ばっか書いてるぞって恐らく思われるかもしれない。
それは僕らは、社会に必要だし楽しいことやってるってわかってるから
いかに伝えられるかというのがこれからの課題です。
なるほど…みなさん4年間で「リッチな経験」をしたんですね…
一同笑い
話を聞いていて思ったのですが、
ゼミがどうとか卒制がどうとか1年間がどうだったかではなくて、
その中でやってきたことがさらに次に広がっていくよう経験を積んだんだな
というのがわかりました。
戒能そんなふうに“やってくれた”んだよね。
松村先生がね。
駒田うん、それはすごく感じる。
そして、そう思ってくれたなら本望。それが伝わったなら!
一同笑い
やはり卒業制作と4年生って区切りっていうのがどのゼミでもあって、
でもみなさんは、やや下を向いて「将来は…」とか「これから…」って言っていますよね(笑)
駒田いや、これからが本番!
戒能そう!これから!
最後に、先生から事前にいただいた、この審査会1年間のゼミについてゼミ生のみなさんへのコメントがきてます!
一同コメントを読んで拍手
松村あーもう先生好き!愛しい!!
新野いやほんとにこれ他の大学の人に美大でこんなことやってるよって言ったら驚かれると思う!
「活動」っていうのをデザインするのは確かに考えにくいところではあると思うんですが。
駒田ほんとに理解するのは5、6年後だと思う… それをわかるように努力したい。
松村したい!
先生もゼミでやってきたことが「これからボディーブローのように効いてくる」とおっしゃってます(笑)
戒能「あのとき!!」「このとき!!!!」
一同笑い
松村「あのときの傷が疼くぜ!!!!」
一同、大爆笑
戒能いや~ボコボコにされたなあ~・・・
松村数年後に「ユウキ(新野君)最近どう?」って聞いたら「いや、最近疼くんだよね~」って(笑)
そんな話みんなでしたい!!
 

<審査会を終えて、一年間を振り返ってみての感想をゼミ生に向けてお願いします。>

このゼミに参加した4年生は、
人間の知的活動とは何か、
それを支える道具やサービスとは何か、
それらアーティファクツを利活用する人々の行為や関心とは何か、
可能性空間を形づくることとは何か…

それらを問い、体験し描きながら考え形づくるデザイン方法を手に入れました。
よくがんばったなと感心しています。
ここで学んだことは、これから皆が新たな社会を形づくるクリエイティブな仕事を進めようとするとき、
ボディブローのように効いてくるはずです。楽しんでください!


なんだか頭が熱くなってきた…!そんな感想を持ったゼミ取材でした。
活動を基盤とするデザインゼミの皆さんの言葉の節々からは
それぞれ一本の芯のようなものを感じました。
須永先生の元で鍛えられ、ゼミを通じてそれを共有した彼らこそが
社会をより良くする志を持ったデザイナーになっていくのだろうなと実感させられました。