List

メディアアートの教科書

CATEGORY

Movie

実写作品

映画 / ドキュメンタリー

ピクチャー・プラネット ― 映像の世界
港 千尋|Chihiro Minato

 歴史のうえで人間がこれほど大量の映像に囲まれて生きたことはない。写真が誕生して170年あまり、映画の誕生から120年だが、いまやスマホやタブレットはかつて誰も経験したことがないほど多くの映像を携帯することを可能にしている。地球そのものが24時間ひとときも眠らない、ピクチャープラネット、すなわち映像の惑星になってしまったのである。

 写真・映画・ビデオ、いずれもそれが発明された時代には、高度な技術を必要とするものだった。機材は高価だったし、それ以上に技術の習得が難しかった。誰もがディズニー映画に憧れたけれど、それを作ることがどれほど大変なことなのかは想像を超えていた。ところが今日の私たちはマルチメディアの発達によって、映像を見るだけでなく作ることも比較的簡単にできることを知っている。このことは、アートに関するかぎりすべての技術は二度誕生するということを示している。

 一度目は技術的な発明である。写真や映画が示すように、多くの発明は専門家でなく熱い心をもったアマチュアによって行われた。二度目は、その技術を使って後世に残るような傑作が誕生した時である。重要なのは、二度目の誕生は時代を超えて共有され、追体験される永遠の誕生だということである。今日ではたったひとりで絵を描き、撮影し、編集して立派なアニメーションやドキュメンタリーを作ることもできる。撮りためた写真に好きな音をつけて映画にすることもできるし、ビデオの記録をドキュメンタリーにすることも可能だ。こうして映像の世界は、爆発的に拡大し、日々ユニークな作品が世界中で生まれている。

 必要なのは映像を通して何かを伝えたいという気持ち、そして普段の生活では見落としている、大切なことに気がつくための、観察の力だろう。道具は常に身の回りにある。映像の世界は、夢と想像力をもった新しい才能を待っている。

Text Book

循環/junkan

横山 香哉

《2013年度 卒業》
肉体から肉体へ生命が転化する景色を写しだしている。鑑賞者は、自身の体の中にも内包するその景色を想起することが出来る。

Artist Web

僕のバニーガール

Kim TaeHyoung

《2012年度 卒業》
「不甲斐ない男。」端からはそう見えてしまう男に、一つの想いが芽生えた物語。ネットの中から始まったその想いを、彼は現実の世界へと広げていきます。現実の中に混在する妄想の景色を美しく描き出しています。

ガクセイプロレスラー

今成 夢人

《2009年度 卒業》
<イメージフォーラム・フェスティバル2010ジャパントゥモロウ部門観客賞2冠>
<第12回長岡インディーズムービーコンペティション審査員特別賞>
<バンクーバー国際映画祭DRAGONS & TIGERS SHORTS部門招待>
<『日韓海峡圏映画祭』日韓ムービーアワード2010奨励賞>
作者自身が大学生活を捧げたインディーズの学生プロレス集団の日々を切々と綴るドキュメンタリー作品。

性―The Nature―

呉 弦佑

《2008年度 卒業》
人が生まれながらに持っているものである性(さが)をテーマに 客観的でありながらも、ウイットに富んだ語り口で 本質的な人間性を解き明かそうとする。

ガジラの青春

松本 壮史

《2010年度 卒業》
ひきこもり・いじめられっ子・恋愛経験なし。だれもが思い描く青春とは縁遠いひとりの若者がバンドを組んで学園祭で歌うまでを追い掛けたドキュメンタリー作品。

a certain day

川端 みずき

《2008年度 卒業》
言葉とそれが指し示す事物とのずれが引き起こす笑いを日常生活の中の何気ない風景の中に見出し、作者の繊細な感覚で映像化した作品。

オドルデクおどらでく

松尾 明子

《2004年度 卒業》
「オドラデク」とはカフカの小説『父の気がかり』からの引用古希祝いを迎えた作者の祖父は近くに在る死について語った。映像の合成を行い、祖父と祖父の見る死の存在を可視化した作品。

101

酒巻 大樹

《2009年度 卒業》
人間の心の奥に潜む「見る・見られる」にまつわる不安と欲望をテーマに現代社会における視覚の優位性がアイロニカルに描かれた映像作品。
ご注意:こちらの作品には性的な含まれています。ご確認の上視聴して下さい

Tamabi idd Art & Media Program「メディアアートの教科書」
多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース作品集
COPYRIGHT © IDDLAB. SOME RIGHTS RESERVED 2014.

ニューヨーク市マンハッタンのタイムズ・スクエア

取り囲む建築の壁面がほぼすべてスクリーンとなることにより、歴史的な広場はひとつの映像空間と化している。 (写真:港千尋)

『ビデオフィッシュ』ナム・ジュン・パイク

寝転んで鑑賞する作品。パイクは映像を、それを見る人の身体性を含んだ空間芸術へと拡張した。ナムジュン・パイク(1932年–2006年)韓国出身の現代美術家、音楽家、パフォーマー。ビデオ・アートの創始者と言われている。日本国内ではワタリウムや原美術館などにその作品が収蔵されている。(写真:港千尋)

クレイアニメ作品『チキン・ラン』のセット

粘土でつくられたモノが縦横無尽に動き回るクレイ・アニメーションの世界に新時代を拓いたニック・パーク。モノ作りの面白さと創意工夫があふれている。写真:港千尋ニック・パーク(1958年–)イギリス出身のクレイアニメーション作家。過去に4度のアカデミー賞を受賞するなど、クレイアニメーションの巨匠として知られている。代表作に『ウォレスとグルミット』シリーズなど。