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メディアアートの教科書

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Digital
Fabrication

デジタル
ファブリケーション

デジタルデータの物質化

デジタルファブリケーション
久保田 晃弘|Akihiro Kubota

 3Dプリンターレーザーカッターデジタルミシンなど、データを物質化するパーソナルなデジタル工作機械によるものづくり―デジタルファブリケーション―が、美術制作の可能性を広げつつある。CGやCADなどの3Dデータから、樹脂などで手にとれる物体(モノ)を出力することができる3Dプリンタは、つい10数年前は1台数千万もする代物だった。しかし2009年に、ニューヨークのブルックリンに設立されたMakerBot社が、750ドルのキットとして販売した「CupCakeCNC」を皮切りに、個人が所有できるパーソナル3Dプリンタの時代が始まった。情報を物質に変換することができる3Dプリンタは、ディスプレイのなかのかたちが、スクリーンや印刷といった2次元の視覚的世界を飛び出して、3次元の物質空間のなかに出力できるという意味で、第2のデジタル革命を引き起こすキラーマシンと呼ぶことができる。

Text Book

多摩美術大学情報デザイン学科デジタル・ファブリケーション機材の使用風景。
映像作品内使用音源:Vimeo Music Store/Is-Reality by René Vis

Tamabi idd Art & Media Program「メディアアートの教科書」
多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース作品集
COPYRIGHT © IDDLAB. SOME RIGHTS RESERVED 2014.

3D プリンター

紙に平面的に印刷するプリンタに対して、3DCAD、3D CGデータを元に立体(3次元のオブジェクト)を造形する立体プリンタのこと(Wikipedia参照)。

レーザーカッター

レーザー光を切削や切断加工に利用することで、従来の刃物や切削器具を用いても不可能な機械加工(彫刻・切断・マーキング加工)を行う用途で開発された工作機械(Wikipedia参照)。

デジタルミシン

通常のソーイングマシンとしての機能だけでなく、コンピュータと接続することで自分でデザインしたオリジナルなパターンを刺繍することができるミシン。

Struktural Ornament
Michael Piasecki,Malgorzata Mozolewska
2010

荷重分布によってメッシュの粗密がコントロールされた椅子。遠くからみると椅子に見え、近くからみると巨大構造物に見える。3Dプリンタの持つアルゴリズミックで緻密な造形力は、スケールに関する既成概念を反転させる程の力を持つ。

ガイガー・オブジェクト
久保田 晃弘
(111002-125331-150651at府中)

2011年10月2日(日)午後12時53分31秒から8000秒間、府中市美術館公開制作室で計測された環境放射線データの物質化。 (協力:株式会社インクス)

産廃サミット

「廃棄物の総合リサイクルセンター」株式会社ナカダイは、多摩美術大学と共同で、10トンの産業廃棄物を素材として、デザイナー、建築家、アーティスト、それに学生が新たなプロダクトを作る第一回『産廃サミット』を、2011年9月23日に多摩美上野毛キャンパスで開催した。リサイクルによって社会の共有物となったソーシャルマテリアルと、カスタマイゼーションを容易にするデジタルファブリケーションの組み合わせには、さまざまな可能性がある。

astro ornament

2012年4月21–22日に開催されたNASAのハッカソンから生まれた、「あなたのための」オーナメントを生成するアプリケーションとファブリケーションの連動サービス。NASAのデータベースから任意の日時の惑星の座標を取得し、その位置を断面形状とするさまざまなリングを生成する。生成した形状をウェブ上で共有したり、3Dプリンタで出力することで、実際に身につけることができる。リングを生成するアプリのプログラム・コードもオープンソースで公開されている。

アレシボ・オブジェクト
久保田 晃弘

1974年11月16日、プエルトリコのアレシボ電波望遠鏡から宇宙に向けて送信された、23×73=1679ビットのアレシボ・メッセージ(情報)からつくられた物体。1から10までの数字、水素・炭素・窒素・酸素・リンの原子番号、DNA のヌクレオチドに含まれる糖と塩基の化学式、DNAに含まれるヌクレオチドの数、DNAの二重螺旋構造の絵、人間の絵と人間の平均的な身長、地球の人口、太陽系の絵、アレシボ電波望遠鏡の絵とパラボラアンテナの口径が含まれている、宇宙人のための彫刻。 (協力:株式会社インクス)

CupcakeCNC

MakerBotIndustries社が2009年3月に販売を始めた。外形のサイズは350mm×240mm×450mm、造形部の大きさは、100mm×100mm×130mm。基本キットの価格は750ドルだった。90年代に起こった最初のデジタル革命のモットーは「アトム(物質)からビット(情報)へ」であった。『WIRED』誌の2010年2月号でクリス・アンダーソンが「次の産業革命では、アトムが新たなビットとなる」と宣言したが、今日の第二のデジタル革命はむしろ、アトム対ビットの構造が終りを告げ、アトム(かたち)とビット(コード)が一体化した「ハイブリッド」な時代が来た、というべきだ。

多摩美ハッカースペース

2010年4月にオープンした、自由と意力、すなわちハックの精神にもとづいて、日々創造的な制作を行うための、オープンな制作スペース。またの名を「超」図工室。CNC CupCake,Thing-O-Matic, Up!, CraftRobo, Janome Memory Craft 200E といったデジタル・ファブリケーション機器が設置されている。水槽や水耕栽培装置といった、バイオメディア・アートのための装置もある。