List

メディアアートの教科書

CATEGORY

Animation

アニメーション

CGI / ハンド・ペインティング

CGI ― コンピューターが描く世界
原田 大三郎|Daizaburo Harada

 今、私たちの生活は、コンピューターテクノロジーを抜きに語ることは出来ません。インターネット、携帯電話などあらゆる状況の中でコンピューターは私たちと密接に関わっています。そして、その状況は芸術表現の中においても同じことが言えます。絵の具や絵筆の代わりに、キーボードやマウスを操作してコンピューターに向かい、作品を創るアーティスト達が沢山います。そして、それらの活動の中で最近のある大きな波は、「デジタル」というキーワードのもとに繰り広げられる、グラフィックと映像の表現です。

 特に映像の世界では、いわゆるハイビジョンを越える解像度(4Kなど)のデジタルRAWデータで収録することが出来るムービーカメラやそのデジタルRAWデータを“現像”するカラーグレイディングシステム。実写映像を解析しカメラの動きや登場人物の動きを抽出しCGと合成するノンリニアな編集システム。非圧縮動画データを高速で再生することが出来るRAIDdiskシステム 。これらコンピューターによる新しい技術の登場によって過去とは全く異なった新しい映像表現の世界が生まれました。それは 「デジタル」というマトリックス状のフィルターに現実世界(アナログ)を流し込み、世界を“ドット化”する……あたかもすべての外部情報を“脳”で処理し、現実を認識している私たち人間……その行為と同じようなプロセスが、このデジタル化の作業では行なわれています。2011年7月に放送が開始された地上デジタルテレビ放送(ハイビジョン)では2073600個というドットが存在しています。アーティストはドット化された世界を独自のコンセプトとテクニックで操作し、新しい世界を再構築していきます。

 アーティストによって表現されたドットの海のうねりからは、ある時は美しい自然が、ある時は最新のVFX技術によって作られた映画が、またある時は良質なドキュメンタリー作品が眼前に広がるのです。

 CGI(Computer Generated Image)、コンピューターが作り出すこのデジタルな新しい映像表現のフィールドは、まだ成長段階です。実はハイビジョンのドット数では足りません。このドット数ではアナログな現実を再現出来ないのです。おそらく皆さんが大学で学び、卒業し社会で働くようになるころには現在、高画質と呼ばれているハイビジョンを越える、前述の4Kや8Kという超高解像度の映像フォーマットが映像制作の世界では一般化することになるでしょう。それらの映像は、最先端の大型の有機ELフラットディスプレイによって高精細な鮮やかさで映し出されているはずです。それは人類が初めて眼にする、巨大な発光する映像です。そこでは新しい感覚と新しいコンセプトが必要になるでしょう。

Text Book

ゆきすすみさりゆき

くわがた

《2013年度 卒業》
「コンピューター演算」を用いたアニメーション作品。演算によって生成され歪みながらも進んで行く光景は、曖昧な記憶の中を旅するような心地よさを与えてくれる。また一方で、そうした心地よい空間に対しての畏怖が立ち現れてくる。

Artist Web

hug

いより さき

《2012年度 卒業》
邪気に次から次へと抱きつく少女。アニメーションによって描かれてパウダー状の質感は、抱きついたそれぞれの温もりと、切なさを感じさせてくれる。

Artist Web

ホリデイ

ひらのりょう

《2010年度 卒業》
湖のほとりの不思議な舞台。一匹の猫の前で演奏される音楽。得体の知れないつぶやき。誰にも気づかれることのない、あまりに身勝手な水の世界。

Artist Web

evolution

奥山 光貴

《2011年度 卒業》
生物の進化を機械の構造の進化になぞらえて表現した3DCG作品。

SUSTAINANT

落合 桂子

《2012年度 卒業》
粘土や砂を用いたアニメーション作品。軽快にメタモルフォーゾ(変形)する様は、日常とは異なる視点と景色を生みだしている。映像が進行するスピード感は、「ハキリアリ」の生態を巧みに捉え表現している。

Artist Web

りんごごりんご~おかえりわたし〜

田島 かおり

《2013年度 卒業》
少女の頬から飛び出た「リンゴほっぺ」。リンゴほっぺの壮大な旅が、コミカルに愛らしく展開していく。

Artist Web

Notation of Rotating Earth
「自転譜のための組曲 ―ガイア―」

大橋 史

《2009年度 卒業》
風景の中に点在する、"光点"をひとつの音としてとらえ それを元に新しい楽譜を創造するモーション・グラフィックス作品。

Artist Web

Illmiaube

吉良 向平

《2011年度 卒業》
多様な人工光のバリエーションを生き物の進化体系と捉えて撮影した写真のエレメントから光の生物をデザインした「光の生態図鑑」。

.zip

勝又 梓

《2012年度 卒業》
「食」をテーマとした新感覚アニメーション・ホラー。ジッパーの開閉する音が、視聴者自身のイマジネーションの世界へと引き込ませる。連続する短編ストーリが、「食する欲望」の最深部へと誘う。

雨ふらば 風ふかば

沼田 友

《2010年度 卒業》
<第17回学生CGコンテスト 優秀賞>
オリジナル脚本を元に制作された フルCGによるアニメーション作品。亡くなった彼女の思い出を追い 日々彼女のお墓に通う主人公とそれを取り巻く人々の物語。

ash time

岩崎 宏俊

《2005年度 卒業》
木炭によるアニメーション作品。微細な粒子の集積は、儚く奥深い世界を表現している。

Artist Web

非生命体のクラスタ

牧野 綾子

《2011年度 卒業》
有機物と無機物が織りなすアイロニーを人間とロボットが共存する世界を舞台に表現した。3DCGと手書きアニメーションがミックスされたハイブリッドなアニメーション作品。

時めぐり ヴィネチア編

鈴木 裕偉

《2010年度 卒業》
水没しつつあるイタリアのベネチアの様子を過去・現在 また未来に渡ってひとつの映像詩として表現した フルCGによるアニメーション作品。

Artist Web

Tamabi idd Art & Media Program「メディアアートの教科書」
多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース作品集
COPYRIGHT © IDDLAB. SOME RIGHTS RESERVED 2014.

4K、8K

K解像度は水平画素数4,000×垂直画素数2,000ピクセル前後の画面解像度を持つ動画フォーマットの総称。
8K解像度(スーパーハイビジョンなど)では、4K解像度の4倍、一般に出回っているHDTVの16倍の画素数を持つ。(Wikipedia参照)

RAWデータ

デジタルカメラなどにおける完成状態にされていない画像データ。
Rawは「生」「未加工」を意味する。(Wikipedia参照)

カラーグレイディングシステム

映画の編集においてデジタル化された色彩調整など上映までに調整をおこなうプロセス。アナログ機材を使用しないで色域の広いデジタル機材のみを使用して可能となる映画制作のプロセスを指す。
(Wikipedia参照)

ノンリニア

コンピューターを使用した非直線的(ノンリニア)な映像編集方式のこと。1990年代に登場してからPCと共に急速に普及した。

RAIDdisk システム(レイドディスク装置)

複数台のハードディスクを組み合わせることで仮想的な1台のハードディスクとして運用して、冗長性を向上させる技術。

有機ELフラットディスプレイ

有機エレクトロルミネッセンスと発光を伴う物理現象を利用した有機発光ダイオードや発光ポリマー製品の発光素子は次世代ディスプレイ技術として期待されている。有機 ELディスプレイはそれ自体が発 光するため薄く、少ない電気で稼働が可能である。(Wikipedia参照)

非生命体のクラスタ
牧野 綾子
2011年度 多摩美術大学 情報デザイン学科
メディア芸術コース 卒業制作作品

有機物と無機物が織りなすアイロニーを人間とロボットが共存する世界を舞台に表現した、3DCGと手書きアニメーションがミックスされたハイブリッドなアニメーション作品。独特のタッチが観るものに強い印象を残す。

Notation of Rotating Earth
自転譜のための組曲 ―ガイア―
大橋 史
2009年度 多摩美術大学 情報デザイン学科
メディア芸術コース 卒業制作作品

アジアデジタルアートアワード2009 カテゴリーB動画部門入選/THE SIX’09webコンペティション優秀作品として入選と展示 映像作家100人 2011年度版に収録。

Swallowtail Butterfly
原田 大三郎
1996年

監督:岩井俊二より

evolution
奥山 光貴
2011年度 多摩美術大学 情報デザイン学科
メディア芸術コース 卒業制作作品

生物の進化を機械の構造の進化になぞらえて表現した3DCG作品。 色調を押さえた画面構成からは作者が目指すスタイリッシュな世界作

降伏論
三品 和貴子
2009年度 多摩美術大学 情報デザイン学科
メディア芸術コース 卒業制作作品

「阿呆」をテーマにした5本の短編連絡アニメーション。 アニメーション、及び音楽とも作者がひとりで制作している。 その作業から生