• 鈴木さゆりは、日常生活でよく見るものや事象を日常の文脈から一時的に切断し、動きやメディウムに絞って展示空間に移動させることで、そこで起きている物事を別の視点から捉え直す作家です。前作「Ⅰ〜のような進み/止まり /Ⅱ 〜のようなめくり / Ⅲ 〜のような回転/落下 」で、静止した日用品に内在する、異なる動きの可能性を提示した鈴木は、今作において、人の座る机を中心にした日常風景に着目します。
    この机では、誰かが紙を取り出し、調べものをし、ペンを動かしているようですが、そこにいる個人の出自や人物像は明らかにされていません。日常生活の空間から人のみを取り除き、そこに伴うたくさんのものの動きを顕在化させることで、鈴木はそこにいたはずの個人の癖や社会的背景を、逆説的に浮かび上がらせようとします。