• これまでましみは、描画された図像の認知に関する実験的な作品を制作してきました。
    一個人の経験に基づき形成された図像に対する認知は、しばしば事実と異なる形を持ち、またそれらは他者の認識とは関与し得ません。本作品は、図像を通して他者の認知を探ることで「認知は共有し得ないが、その相違が存在すること」を、鑑賞者及び制作者が知ることを目的とします。

    また本作は描画にトレース手法を用いています。
    ましみにとって絵の制作におけるトレースは「元絵を複写する / 完成を見据えて理想化する」工程ではなく「気持ちいい線を選ぶ / 気持ちいい余白を作る」ためにあり、それは図像を表現 / 完成させるための線の抽出ではなく、線を描く / 抽出する行為に重点があります。
    トレースによる描画から線と余白が表層化されることで、図像を構成する要素 / 形に対する認知を改めて思考できるのではないでしょうか。
    図像から線と余白が離脱し、重なり曖昧になり、輪郭が不明瞭になりながらも、そこに像は存在しています。