• 「人々の手で作られたものが崩壊する時、見えなくなるのは物質だけではない。人の記憶、社会の記憶、解釈や、その土地の記憶までもが同時に沈んでいく。そして、再び人々の前に姿を表す時には、現在の解釈が折り畳まれた状態で浮かび上がってくる。つまり、ものを復元する際には人の想像力で穴埋めする作業が必ず含まれており、そうして復元や崩壊を繰り返してきたものは、その時代に人々がそのものをどのように受容していたかを現在の我々に見せてくれる。- (堀井)」

    堀井野の花は、約1年半のフィールドワークとリサーチを通し、特定の場が持続して保存される現象や、人の手が介入した場が経験する文脈の移行を主題に制作を続けてきました。前作「消えたり現れたり/ disappear, reappear」(2019)において、公共の海岸やプライベートなバスルームなど、公 / 私についての認識が曖昧な複数の場所にスパイラル・ジェティを再構成した堀井は、あるものが経験するかたち(輪郭)や文脈の移り変わりを、「沈没」、そして「再見」という、2つの言葉で位置づけます。

    本作では、作家の地元に存在し、見えるけれども本来到達できない場所であった東京湾海堡をモチーフに、約1年に及ぶフィールドワークにおける過程や考察を、スクラップブック/ 映像 / 立体 / テキストからなるインスタレーションとして提示しています。