坂田晶は、目の前にあるものが持っている、あり得たかもしれない状態（それの持つ可能性）を数えることを主題に制作を行っています。例えば、信号機は青／黄／赤の3色のうち1つを光らせて交通を制御しますが、発光体が3種類あることから、現実的に青と赤を同時に光らせることが可能です。また、通話においては電波の受信不良により、予期しない「乱れた音声」がスピーカーから出力されることがあります。本作「カウンチャ〜」ではそういった考え方を、鑑賞者によって自由に入力される文字列に適用し、あり得たかもしれない無数の可能性の中から、その特定の文の順番を数え出します。坂田にとって、あり得たかもしれまい可能性を数えること、番号をつけることというのは、不可視化された別の可能性への思いを馳せることです。しばしばノイズや不正確なものとして取り除かれ、存在そのものが忘却されてしまうそれらの並行世界を、坂田は数字として提示することで身近なものにします。