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メディアラボ

竹久直樹

温室について

8000 x 11000 x 5000 (mm)

Nikon F6、Kodak Portra400、Plustek Opticfilm120、Adobe Lightroom、Vuescan、インクジェットプリント

ネガフィルムのスキャンデータである「フィルム写真」において
必ず発生し、かつ不必要とされるスキャンデータ上の細かな傷やゴミを、
「フィルム写真」における決定的瞬間の痕跡であると捉え、
その写真とスキャナー等を用いたインスタレーションを展開する。
conservatory.zip

私が4年間ほど制作を続けている「フィルム写真」とは、撮影後の35mm判カラーネガフィルムをスキャンしてデータに起こしたものであり、
1.被写体との関係性を描写し、それによって、写真を撮る「私」の存在のあり方が強く浮かび上がる「私写真」である。
2.また、撮影者本人にとっては至極個人的な感情を揺さぶる、ロラン・バルトの言うところの「温室の写真」である。
3.一方、はたから見ればその全てはフィルムで撮ったことに最も重きが置かれ、全ては「類型的」である。
4.また、スキャン時に発生する細かい傷やゴミ(文字通りの「プンクトゥム」)は、「フィルム写真」における決定的瞬間の痕跡である。
「フィルム写真」とは単にフィルムで撮った写真ではなく、ネガのスキャンデータである。にもかかわらず、スキャン(二度目の撮影)への無頓着さや、単に「フィルムっぽい」ものとして「フィルム写真」が消費されていくのが特徴だ。なぜなら、スキャンの決定的痕跡である傷やゴミな
どを、普段の「フィルム写真」鑑賞時に目にすることはないからである。こうした傷やゴミは基本的には全く厄介で、レタッチによって消去され
るか、そもそもゴミかわからない解像度のスキャナーでDPE店などで(しかも第三者によって)スキャンされてしまうのである。
今回、「私写真」「温室の写真」「類型(タイポロジー)」「プンクトゥム」という、自らの「フィルム写真」において重要であろう4つのキーワードを軸に撮影上のルールを設定した上でロケ撮影を行い、そのネガフィルムをスキャナーを用いスキャンした。私は、今作において展開される小さくけったいな傷やゴミを以って、「フィルム写真」というものを捉え直すことはできないかと考えている。