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OUTER SPACE

7000 x 5000 x 6000 (mm)

Arduino、Unity、ステッピングモーター、プロジェクター、モニター

ゲームが起動されたモニターの前に、
CCDカメラが取り付けられている。
このカメラは、鑑賞者がゲーム内の視点を動かそうと
スティックを倒した際にゲーム内のカメラの動きと同
期して動く。 動いたカメラが捉えたモニター上の映像は
一番奥に位置するスクリーンへと映し出される。
そして一番手前に位置するモニターには、
私たちやカメラの視点ではなく、
ゲーム内のキャラクターの目線から実際に見ているも
のが映し出される。

ゲームのジャンルにTPS(三人称視点)と呼ばれるものがある。これはキャラクターを背後から捉え、操作するゲームのことである。
キャラクターはコントローラーを使って操作するうちに、だんだんと自分と一体化していく。それは、お箸を使うとき、手の感覚がお箸の先まで延長されるときにも似ている。
視点/カメラに関しても同じことが言えるだろう。キャラクターの背後にあるカメラと私たちの視点を同期させている。
しかし、視点/カメラにおける動きは「視点/カメラ」と表記もしているように異なる2つを同じものとして存在させる。TPSでのカメラはチルトやパンといった明らかに目では作れない動きを作り出し、水がかかったシーンや血しぶきが飛んでくるシーンなどは、レンズに直接飛沫が飛んでくる表現が見られゲーム内カメラを視点としてではなくカメラとして定義しているように見える。私たちが見ている視点ではなく、その間に 確実にカメラが挟み込まれているのだ。
視点とカメラが同時に存在しているこの現象を、CCDカメラを実際にモニターの前に置くことで顕在化させる。
ゲーム内と同期して動くCCDカメラはゲーム内の世界だけでなく、モニターの端や、奥にあるスクリーンをも映し出す。
それは明らかに視点とは異なった動きとして映し出され、カメラの存在を意識させる。同時にゲーム内で設定されたTPSカメラは地面や置かれたオブジェクトを擦り抜け、ゲーム内の世界の在り方をそのまま映し出す。また、一番手前に置かれたキャラクター視点の映像は動かすことが出来ず、キャラクターが見ているものをそのまま映し出す。この3つの視点/カメラで捉えた映像は現実やヴァーチャルでの制約をそのまま反映させ、鑑賞者は自分の目という最も身近な視点と共に、同時に捉えることになる。
視点とカメラのすれ違い、現実とヴァーチャルの奇妙なズレを誇張することでその現象を浮き彫りにするのが本作である。