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フューチャーラボ

中島梓

MASKING LINE

8000 x 1118 (mm) 2枚

ロール紙、Adobe Illustrator、SAI、Pixia、スクールペン、インクジェットプリント

読み順やスケール感を意識した、
漫画表現と絵画表現の中間を目指した作品。
媒体が紙から電子の時代に移行し、
より手軽でコンパクトに楽しめるようになった漫画。
そこに《体験》を合わせ、
漫画の別様の楽しみ方を提示する。

自分と他人は違う。違うからこそ共生する。他者に見せる表面は一面かもしれない。しかし、内面は見えないだけ、明かされないだけで多面的である。面をつけたキャラクターたちには、前述の意味を込めている。
ある方が言った。面は、以前であれば、何者かに変身するための道具であった。SNSが普及した今、本来の自分を隠すための道具とする意味合いが強くなった、と。
しかし、私はそうは思わない。変身の意味と同位置まで、秘匿の意味が浮上しただけだ。《面》というモチーフに、マイナスなイメージが強い、という意味を持たせたくない。《面》を持つ全ての人の数だけ、その意味の比率は違う。
Maskingは、覆う、かぶせる、包み込む。Lineは、線、行列、水準、境界線、(行動の)主義、などの意味がある。
2つの展示物、一方は、誰かと寄り添うような明るい場面。もう一方は、抑圧された暗がりの場面を表している。
2つに明確なストーリーはない。提示した2つの場面、それらが印刷された8mの紙を《線》として捉えてほしい。鑑賞するあなたも、私も、どちら
側に立っているのか。狭間で揺れているのか。そもそも引かれた線に意味はあるのか。
描いたイラストの拡大縮小、加工していないデータとディザをかけた粗いデータを混在させることで、綺麗とされる線と汚いとされる線が、グラデーションのように存在する自由を表現している。
多様性というキーワードが、この世界で、時代で、取り上げられるようになった現在。私は、不明で異なる存在たちとの共存について、心をすり減らさないように気をつけながら、考え続けようと思う。