訪問履歴:

メ芸 とは

久保田晃弘(本学科教授)

多摩美術大学情報デザイン学科「メディア芸術コース」は、
米 Apple 社が最初のiMacを発表した1998年に設立され、それから20年、インターネットやモバイルデバイスの普及による社会の大きな変化と共に、多様で複合的な芸術表現の可能性を探求してきました。
「デジタルメディアに正面から対峙する美術教育」を掲げ、ソフトウェアとインターネットの成長に伴走するようにスタートした学科の教育も、それは程なくデジタルのみならず、既存の、そして未だ見ぬあらゆるメディアをも批判的に包含した、ハイブリッドなアプローチへと拡がっていきました。 特にその傾向は、2007年以降のスマートフォンが普及しデジタルとアナログ、物質とイメージの境界が融解したポストインターネット時代が到来することで、さらに顕著なものになりました。もはや「デジタルテクノロジー」や「メディアアート」の姿も意味も、20年前とは同じではありません。フェイクニュースとフィルターバブルが支配する現代社会の中で、人間原理の象徴ともいえる、美術やデザインにいったいどのような役割や機能があるのでしょうか。「メディア芸術コース」は、いつの時代にも生じている、技術と表現、自然と人間の関係のダイナミックな変容を、科学や哲学をも含む複合的な視点で捉えながら、リサーチと作品制作が交錯する実践的な精神による芸術教育を続けています。現在、コース全体はそれぞれ独自のテーマを持つ3つのラボから構成されており、それぞれのラボが自律かつ共同することで、今、ここにしかない独自の創造的文化をつくり上げています。