コンセプト
虚勢を張り続けることによってプライドが一人歩きしていき、僕は段々大きくなる「自分」をコントロールできなくなっていくのです。そんな極個人的な悩みを作品に昇華させることによって、なんだか少しだけ楽になれたのでした。そもそもこの作品を作るきっかけになったのは、つい考え事をしてしまった夜、眠れずに散歩にでかけたときの出来事。それは本当に些細な出来事で、言ってしまうと前からくる車をよけて、ふと空を見てみると月が浮かんでいて……。それだけのことなのですが、僕は大変空虚な気持ちに襲われたのでした。
車が向かいから来たら、当たり前ですがよけなければなりません。僕はそこに絶望を感じました。ほんの少し懐疑な視点をもってみても、ぶつかったら大事ですから、やはりよけなくてはならないのであって自分は本当に無力な存在なんだと痛感させられるだけでした。車が無事通り去った後、月が出ていることに気づきます。この大英断を笑いもせず誉めもせず何も言おうとしないその月は、ただ僕のことをじっと見ているのでした。冷ややかとも暖かいとも、眩しいとも暗いとも言えないその視線から必死で逃れようとするのですが、無理なのです。どこまでもどこまでもついてくる月はなんだか誰かに似ていて、だんだん気分が悪くなるのでした。
いつからでしょうか、意地をはって見栄をはってクールぶって格好つけて大人ぶって……。気づけば僕よりも何倍も大きい自分がそこに立っていて、もう素直にはなれなくなってしまいました。