コンセプトインターネット上にある匿名の顔の画像、その奥にある国籍や年齢、生い立ちなどさまざまなことを想像してみる。インターネット上にあるテキストや、画像や、動画などの情報の中でとくに「顔の画像」が暴力的で、同時に魅力的なものに思えた。そういう無数の物言わぬ顔を素材に映像・インスタレーションを作ってみたいと考えた。前期では画像のドットをモザイクのようなエフェクトにし音に反応するようにした。匿名の顔が音に反応し、何かを訴えるような映像に思えた。そのとき音は極端な低周波と高周波のサイン波和音のアビエンスという構成にした。これは映像が反応しやすくするためでもあった。このヴァージョンは個人的には好きなのだけれど、作品の本質はどこにあるのだろうと再考した。もの言わぬ顔、コミュニケーション、インターネット、雑多なキーワードを整理する必要があった。後期に向けてのヴァージョンアップでは、とくにその人体の一部である顔がもつ情報の中でも皮膚感、色そういうものにフォーカスしていこうと考えた。社会的な意味をもつ作品にするためにはインターネットのデータベースから個人の顔をリアルタイムに抜き出しエフェクトをかけるということもありえたかもしれない。しかし、顔の編集、エフェクト、を考えプログラミングをしているときに面白かったのは、やはり人体の一部である顔がゆがみ何か有機的で人工的という複雑なものに変化していく様であった。ゆえに後期ではその部分にフォーカスして映像としてのエフェクト、そして音も有機的であり人工的というものにした。具体的には写真の顔、皮膚、髪の毛以外の部分、背景などのよけいな部分を消してよりより明確顔だけの情報をとりだし、さらに明度によって三次元の奥行きを与えた。前期に比べるとより立体的に変化する文、よりりありぃてぃがあり鑑賞者としてみたときに「退治している感覚」が前面に押し出され、結果的にコミュニケーションという部分にもフォーカスできたのではないだろうか。
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