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書籍

  • 峰若菜 『森のなか』

    彼女は4年間を通じて絵本の創作を手がけてきた。またその絵本ワールドを空間に展開する試みも続けてきた。空間と物語の融合はなかなか本人の思い通りにいかなくて、さまざまなパターンを試みつつ、現在の形にたどり着いての卒業制作となった。絵本のなかの物語は読み手の脳内を刺激することにとどまるのに対して、物語空間では手触りや視覚的な拡がりなど、さまざまな感覚を誘発する体験が実現することに大きな魅力がある。峰はこの点に着目し魅力を感じて、絵本の世界を空間に展開する試みを続けることになった。そこには基本的には書籍という紙媒体である絵本というメディアをとらえ直し、再構築するというメディア・アート固有の視点が確実に存在する。(准教授・森脇裕之)
  • 吉良向平 『Illumiaube』

    様々な人工光を撮影して作り出された光の生物図鑑。エジソンのフィラメント電球と発熱のないLED光の二極対立だけではない。水銀灯、ナトリウム灯、情報を映し出すディスプレイが発する灯りなど、現代の生活環境には様々な種類の灯りが存在している。
    作者は多様な人工光のバリエーションを生き物の進化体系と捉えて、撮影した写真のエレメントから、光の生物をデザインして「光の生態図鑑」を作成した。昆虫やアメーバや細胞のような光の生物は、確かに私たちの生活環境に生息していて、環境の変化に合わせて、つまり現在の文化の変容に併せて進化し続けている生物のような存在なのである。(准教授・佐々木成明)
  • 日野智世 『擬態語昔話』

    グラフィックデザインの新しい試みとして、擬音だけにによる絵本の制作を試みた。テーマは桃太郎。典型的な昔話のイメージをたどりながら、文字の構成だけでストーリーが進んでゆく。タイポグラフィー分野の発展型と見ることもできるだろうが、作者の場合は形体を主題とした空間構成のアプローチにとどまっていない。作者が注目しているのは、物語中に含まれる擬音のあつかい方だ。それは必然的に発する音響の場合もあれば、心の中に響くイメージである場合もある。このような日本で独特の擬音による表現は、そのような実際にはありえない心情の音をあつかっている点が世界からの注目されている。日本文化の発信力をうまく活用して、擬音絵本の物語に彩りを与えている。これまでになかった文字文化のメディアとしての新しい可能性を感じさせる作品に仕上がった。(准教授・森脇裕之)