これは老夫婦のある一日を淡々と描写した、ストップモーションによるアニメーション作品である。作者はまず老夫婦の日常をビデオカメラで撮影・編集し、その映像を元にすべてを人形やミニチュアに置き換えアニメーションを制作した。その独特の手法は最終的にアニメーションとなった映像にも明確に現れている。この手法は実験的アニメーションの世界でも非常にユニークな作業であり様々な問題を投げかけている。
砂をマテリアルとして使った、いわゆるストップモーションによるアニメーション作品。作業過程では一見何が描かれているのか判らないが、それが蓄積され再生されると、みごとに風景やキャラクターが浮かび上がる。まさにアニメーションの面白さ・楽しさの、ある側面を浮かび上がらせてくれる作品だ。作者が延々持ち続けている"生と死"というテーマを砂を介して表現している作者の姿勢には共感を感じる。
(教授・原田大三郎)
アニメーション、及び音楽とも作者がひとりで制作している。その作業から生まれた物語やキャラクター表現、色彩表現はどれも独特で魅力的だ。2年生の時から作者はアニメーションと向き合い制作してきたが、内容的にも手法的にも卒業制作時にその努力が開花した印象が強い。
(教授・原田大三郎)
この作品は、3年生の時にまずはマンガ作品として完成されたもので、それを卒業制作においてアニメーション作品として再構築したものである。マンガからアニメーションという表現への移行には、最初不安もあったが、作者の粘り強い努力の元にアニメーション作品としても独特の雰囲気を持った作品に仕上がった。印象的なナレーションが導いてくれる物語は秀逸だ。
(教授・原田大三郎)
音と形態の結びつきをテーマにしたオーディオ=ビジュアル・ライヴパフォーマンス作品である。曲げ、傾き、そして距離センサー用いた自作データグローブをインタフェースとして、オブジェクトを物理的に触れたり、掴んだりするアクションで、演奏者は音という素材に触れながら音響構成を行う。具体的には、大きな「塊」の頂点がオシレータに対応しており、この塊の形態を操作することで、塊としての音響が変化していく。(教授・久保田晃弘)
完全に倦怠期に入っている老夫婦と、うだつの上がらない長男という、ある家族の夕食の風景をヒップホップの音楽に乗せ、軽快に構成したモーショングラフィックス作品。アフターエフェクトによって加工・合成された映像は作者独自の美意識によって作り上げられており、また技術的にも高い。デスクトップな環境において製作される映像の可能性を示した秀作である。(教授・原田大三郎)
透明な液晶ディスプレイと、超音波センサーによる独自のインターフェイス・デバイスを使用したパフォーマンス作品。東京初台のICCや町田版画美術館を始め、さまざまな場所で演奏された。液晶ディスプレイの背後に手を挿入して操作することで、面としてのインターフェイスを空間としてのインターヴォリュームに拡張し、視覚上の3次元空間と身体的な3次元空間を結びつける。そこにデューラーの遠近法爾来の、2次元と3次元の相克の歴史を重ね合わせることも可能だろう。(教授・三上晴子)
この作品は作者の確かな画力と繊細な色彩感覚によって生まれた、手描きアニメーションの秀作である。またコンピュータによる着色やアニメーション化も行われており、そういった意味では、デジタル環境の成熟が成し得た、新しい時代のアニメーションということも出来る。しかし、この作品の魅力は、そういった技術的な側面だけではなく、作者が以前から持ち続けていた、"輪廻転生"のテーマが作者なりの視点で表現されている点であろう。今後の活躍に期待する。(教授・原田大三郎)