沈黙のミステリー・ドラマ。3つのショート・ストーリーはどれも同じマンションの1室が舞台だが、1話ごとに住人たちは変わっている。孤独な一人暮らしの密室で物語はサイレント映画の様に淡々と描かれていく。人間の心の奥に潜む「見る・見られる」にまつわる不安と欲望をテーマに現代社会における視覚の優位性がアイロニカルに描かれる。他人のプライバシーに介在できる者、ここではない彼方を注視する快楽に溺れる者、存在するはずのない他者に記録され続けている者。Web、ヴィデオカメラ、デジカメ。彼らが迷い込んだ迷宮とは、日常使ってる視覚装置が拡張してしまった、我々の心の闇の奥なのだろうか。
(准教授・佐々木成明)