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金瑞姫『lights』

  • 何気ない室内に置かれた身体の断片。無造作にベッドに横たわる身体は、空間に偶然置かれた物体のように、画面の一部として捉えられている。住人たちは、霊的な存在のように、その空間に偶然写り込んでいただけに感じられる。カメラは住空間の中でくつろぐ人物のために向けられているのではない。個々の生活をドキュメントするための構図は形成されない。 住人によって織りこまれた空間に漂う微妙な雰囲気と呼ぶべき霊性(ベンヤミン)は、世界中のすべてが均一のようでありながら、それでもここだけしか存在しない。そのような無意識の領域でしか我々が捉えられないなにかを定着するため、作者はカメラを向けた。期待を裏切るように無事件のまま刻々と過ぎていく日常について考察を行い。そこから光が創り出す普遍的な現象について、作者は認識を深めていった。明るい部屋に塵や砂埃が舞い知覚可能となる空気感や、廻り込む光が立ちあげる立体感と素材感。それらのすべては住まう人物に帰属する現象である。空間に宿る霊性を、かけがいのない光の痕跡として定着する試み。金瑞姫は、写真だけが定着可能な、世界中でここだけに発生する微細な光暈(こううん――ハレーション)を写しとろうとする。どこにでもある空間は、シャッターが押された瞬間に、永遠に変わることのない現象の場として定着される。
    (准教授・佐々木成明)