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2007年度

  • 船橋理奈 『Emotionalism』

    近年、海外でもその存在を評価される、日本の漫画やアニメーション。作者も例に漏れずこれらの文化にふれ成長してきた。しかし作者は、その影響を単純な憧れやノスタルジーに留めるのではなく、キャラクターの表情と作者が描く力強い線に集約させ、独自の絵画を構築することに成功した。それは日本的、漫画やアニメーションと現代美術の融合から生まれた、新しい日本の表現となる可能性を秘めている。(教授・原田大三郎)

  • 久保山威 『ホネノキロク』

    横たわる人物。その人物の微妙な動きをシミュレーションした骨のCG映像。その二つの映像を、ある時間軸の中で重ね合わせ、黒いベッドの上に投影したインスタレーション作品。作者は三年次より、"骨"を意識し、様々な作品を制作し今回のスタイルに辿り着いた。その思考の過程は今回の作品を見ると決して無駄になっていなかったことが判る。(教授・原田大三郎)

  • 林千景 『猫に焦がれた男』

    猫に焦がれた男が織り成す、不思議な生き様を描いた絵本。猫と猫に焦がれた男と、その主人。この複雑な関係の中には、作者の人間に対する深い思いが込められている。またこの物語を道案内する絵は、独特の強さを秘めた印象深い絵である。そこには作者の画家としての力量を垣間見ることが出来る。(教授・原田大三郎)

  • 河上裕紀 『胡蝶の夢 ~Life is an empty dream.~』

    荘子の"胡蝶の夢"をキーワードにし、文学・数学・哲学・科学が持つテーマや問題を盛り込み、作者の人生観を表現したモーショングラフィックス作品。作者の卓越した、グラフィック感覚やアプリケーションへの知識が随所に埋め込まれている。また締め切り間際まで努力した、その結果が作品に反映されているのも好感が持てる。完成度の高さは作者がすでに映像の世界でプロフェッショナルとして生きていくことが出来ることを物語っている。(教授・原田大三郎)

  • 佐々木倫太郎 『匂い』

    映画に登場する年齢を重ねた男"オジサン"の捕らえどころのない存在感に魅せられて、作者はオジサンの肖像をとり続けた。写真ではなく、インタビュー形式の映像で綴られた様々なオジサンたち。巷、どこにでもいる普通の人々。愉快で、呑気で、どことなく哀愁を漂わせる男たちの肖像は、その存在だけで匂いさえ立ち上がってくるほど多弁であった。(准教授・佐々木成明)

  • 川上秀行 『萬絵詞 YOROZU-E-KOTOBA』

    川上秀行くんは「漫画 (manga)」の可能性を作品として拡張していく姿勢を貫いてきた。フィールドワークでも漫画を多方面から研究し、自らが制作したアニメーションのページを観客が操作していくインタラクティブ型の作品は、デジタルマンガ大賞のメディアコンテンツ部門で優秀賞を受賞し、愛地球博ロータリー館でも展示された。 卒業制作「萬絵詞」YOROZU-E-KOTOBAは、人間の欲望に潜む本能を墨絵的に表現したアニメーションであり、また、床の間の掛け軸をフレームとして捉えた空間で展示した映像インスタレーションでもある。(教授・三上晴子)

  • 長谷川優 『there is』

    長谷川優さんの「there is」は瞼の開閉をインターフェイスとした作品で、無意識と意識、意味と無意味の狭間をスイッチングしていく。視覚情報として即座に認知される「物質」は、もしかしたら瞬きをした瞬間に忘れ去られるかもしれないというテーマを起点に、前期では瞼の開閉で映像が変化する作品を制作、後期には配置された物質の組み合わせが変化する作品を完成させた。瞬きをした瞬間に意識的に強く現れてくるものと消失していくものがあるというプロセスをインタラクティヴ・インスタレーションとして表現している。(教授・三上晴子)

  • 豊嶋七瀬 『in the chain』

    豊嶋七瀬さんは「in the Chain」に行き着くまで、たえず「生きている」「死んでいる」いう定義の間にある「何か」を捉えて作品化しようとしてきた。この難しい問題に3年生時には棺桶の作品まで制作している。この作品は「生きているとはどうゆう事か」いう定義をネット検索し、その単語の連鎖によって空間に逆さに言葉が浮かび上がり、それを巨大なレンズがさらに逆さにして正常化しいくという、ループを繰り返している。文字だけが一直線に右から左へと反転移動しながら延々と続く静寂なインスタレーションである。(教授・三上晴子)

  • 多田ひと美 『全的に歪な行且 -第二犯-』

    多田ひと美さんの「全的に歪な行且─第二犯」には「全的に歪な行且-第一犯」という前作品がある。それは六法全書を特殊な装置によって歪に読み上げるインスタレーションで法律の文脈のカオス状態を表現していた。卒業制作では毎日のグーグルのニュースを即座に画像検索し、そのニュースをある意味で勘違いした画像によって組み替えていくプログラムを制作し、最終的に知らされる情報と知るはずもない情報がリアルタイムに混在した映像インスタレーションとなった。情報の破壊と歪な再生を試みた作品と言える。(教授・三上晴子)

  • そがあやの 『sound round』

    生活の中にとけ込む何気ないインタラクションは、日常生活を活性化させると作者は言う。写真では何の変哲のないテーブルに見えるが、手をかざすとピアノの音色がする。テーブルトップの裏側にセンサーが隠されていて、反応すると音が出る仕組みになっている。うまく手を動かして曲を奏でることもできる。ティータイムにこんなテーブルでお茶をすれば、会話が弾むことだろう。この作品で作者は、生活空間のなかに、メリハリを与える役割を果たすアートのあるべき姿を夢見ようとしている。(准教授・森脇裕之)

  • 椿原正洋 『ある・ふうけい』

    乳白の液体が満たされた円皿が、整然と並んでいる。時折、静かな液面にぽつりと滴がこぼれて、水面に波紋が拡がる。それだけしかない空間で、ずっと追い求めてきた作者の心象風景を語ろうとしている。彼が一貫して求めたのは、「白」い空間。白は何もない虚空であると同時に、万物が生み出される前の原点でもある。「白」い空間に作者は自分の創作の原点を見いだして、それを求めた。この作品は彼の原点であり、すべてはここから始まるという意味で卒業制作にふさわしい作品になった。(准教授・森脇裕之)

  • 雨宮麻衣 『猫神様』

    ネコ好きで、日頃からネコの生態研究に熱心だという作者が作ったのは、巨大なネコの後ろ姿。日頃からネコのおしりに惹かれるという。神社の鈴のようにしっぽを振ると、股間がもぞもぞと回転するあたりは非常にユーモラスだ。脚をふんばる立ち姿に、つい頬がゆるんで何もかも許してしまいそうだ。作者のマイペースに惹かれてしまう力が働いているのか、無邪気なようでいて、あなどれない共感覚を感じさせてくれる作品である。(准教授・森脇裕之)