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2005年度

  • 中江昌彰 『Rocket』

    Cg合成による風景写真『Rocket』では、都会や観光地といった見慣れた日本の風景の中に、当然のように巨大なロケットが配置されている。しかし合成された風景写真を見ていても、いごこちの悪い違和感、ましてパロディー的な印象は受けない。狭い国土をパッチワークのごとく様々な人工物と情報が埋め尽くしているこの国の現状を考えるなら、ほんの少し今までの歴史が違っていたなら実際にあったかもしれない日本の風景なのだ。中江の『Rocket』が教えてくれるのは、可能性の中にあるもう一つの日常なのだ。(教授・原田大三郎)

  • 津島岳央 『メディアアートの寓意』

    フェルメールの絵画をCGで再現し、ステレオスコープを用いて立体視を体験させ、さらにその画像を回転させることにより、描かれた部屋のなかへ入ってしまうという驚くべき作品である。メディア・アートをパースペクティヴの歴史のなかへ投げ返しながら、「キャンバスの裏側」というフィクションを示し、「絵画によって見られる」という不思議な経験を惹き起こす。技術と魔術の結婚である。(教授・原田大三郎)

  • 遠藤麻里 『東京ジプシー』

    遠藤麻里の『東京ジプシー』は開くと1メートルを超える巨大な絵本。製本された書籍に遠藤は印刷ではなくハンドペインティングにより東京に住む同世代の愛の物語を描いている。ページをめくると、そこには肉筆で描かれたアウラ的世界が拡がる。この世界にただ一冊、ここにしかない世界、ここにしかない物語。それは突き刺さってくるような本質的な絵物語メディアの創造でもあった。(教授・原田大三郎)

  • 谷口暁彦 『con (con+opposition)』

    透明な液晶ディスプレイと、超音波センサーによる独自のインターフェイス・デバイスを使用したパフォーマンス作品。東京初台のICCや町田版画美術館を始め、さまざまな場所で演奏された。液晶ディスプレイの背後に手を挿入して操作することで、面としてのインターフェイスを空間としてのインターヴォリュームに拡張し、視覚上の3次元空間と身体的な3次元空間を結びつける。そこにデューラーの遠近法爾来の、2次元と3次元の相克の歴史を重ね合わせることも可能だろう。(教授・三上晴子)

  • 前川峻志 『千篇書道』

    携帯電話から「k@generative.info」へアクセスし、そこへメッセージを送ると、彼がプログラミングした時間軸をもった独自のタイポグラフィーによってテキストが変換される。この携帯電話を利用するソフトウェア作品「千篇書道」は、情報処理推進機構の2005年度未踏ソフトウェア創造事業「未踏ユース」において採択され、開発支援を受けた。このプロジェクトは広く公開され、ユーザからのダウンロードによって、さらなる進化を遂げるだろう。(教授・三上晴子)

  • 佐藤雄一郎 『ひとりじゃない』

    身体が入る程の大きな2つのボックスは、体験者が対面するように設置されている。鏡とガラスがスリット状に交錯しているため、自分の身体と相手の身体が分断されていくように感じるが、その体験の根底は他者との違和感によって成り立っている。そこに設置されたマイクでは、相手と話そうとすればするほど相手の声は聞こえなくなる。ディスコミュニケーションをテーマにしたこのインタラクティヴ・インスタレーションはNHK-BS 「デジタル・スタジアム」でも紹介された。(教授・三上晴子)

  • 渡邉朋也 『IAMTVTUNERINTERFACE』

    テレビというメディアに徹底的に拘ったこの作品は、現在放映されている全ての番組がリアルタイムに3次元のオブジェクトのテクスチャーとなって巨大スクリーンに映し出される。ネットでの視聴率とも対応し、観客のリモコンによるザッピングにも対応しながら、その蠢く画像がグラフのように上下に移動し、事件映像がアイドルになり「ザッ」という音とともに次々にそのイメージは変容していく。ありそうでないこのテレビ・アートの前には、我々の否応無しの日常が現れてくる。(教授・三上晴子)

  • 山本純子 『便所四十八手 〜女体による和式〜 平成十八年度版』

    トイレという密室空間での作法とは、誰に見せるものでもないだろう。そのばかばかしさをあえてマニュアル風に仕立てあげた。人間のとる不可思議な慣習のおもしろさに着目していた作者が目をつけたのは排泄行為だった。そこでは文化・民族的な背景や風俗史の観点が浮かびあがってくる。排泄行為にひそむ「羞恥」という心理作用を、あからさまに表現し笑い飛ばすことで、かえって作者の求めている興味が浮かびあがる構造をねらった点は独特のセンスが光る。(准教授・森脇裕之)

  • 阿波田稔子 『潮風ローカルライン』

    鉄道模型の列車が白いジオラマのなかを回ってゆく。そのタイミングに連動して天井から投射される映像では、街のなかで起こる物語が映し出される。作者はリアルとバーチャルを結びつけ、統一感のある世界をつくりあげた。オブジェ制作、センサー・システム、映像制作とさまざまな要素がこの作品では取りこまれているが、これらが連動して動き始めたときに、さらに新しい世界を広げることができることをこの作品は証明している。(准教授・森脇裕之)

  • 宮本和奈 『ミラボン』

    「インタラクティブ・ミラーボール」と名づけたい作品。光を浴びて光り輝くミラーボールへの関心が、自らの手で操ることのできるミラーボールへと進化させていった。この作品では光のシャワーを浴びるといった形容詞がよく似合う。おそらくこの作品は一般に受け入れられやすいだろう。作者が考えるように、パーティー会場やイベントなどで使用されると際だつ存在となる。社会にとけ込むメディア・アートはこれからの重要なポイントだ。(准教授・森脇裕之)

  • 高橋直樹 『CHERRY KING 5号 大人の秘密基地』

    戦車が好きで、つくってしまった男。自分の好きなことをそのまま実践してできたのがこの「妄想の戦車」だ。そのできばえを見る限り、どんなことでも自分の信じることに覚悟を決めてとり組む姿勢について、彼はお手本をしめしてくれたといえるだろう。こだわりをそのままぶつけることは、何をおいてもアートの基本中の基本だろう。美術学校に入学してこのもっとも重要なことに出会った彼は正しかった。(准教授・森脇裕之)