この卒制作品は、相対的な視覚と意識の関係性の考察から始まり、記憶が介在 する個人の眼差しと印象についての結論へと到達する。制作の初期段階において近藤はフ レーム(枠)により強調あるいは様式化される視覚認識にこだわり、母親の顔や自室の風景といった日常的な視野のいたるところに赤いフレームを描き写真に納めていた。その後、大小のフレームを空中に吊った野外インスタレーション作品を試みる。そして前後2つの視点が1画面内に構成された映像作品へと到達する。この作品では彼女がよく知る路地を移動する視点から風景の変化が描かれている。前方の視覚が実際に見ている視野であり、 後方へと遠ざかっていく風景は、本人の記憶として意識に描かれるもう1つの知覚の具象化と捉えることができるだろう。(教授・港千尋)