Oedipus complex 〜そこに愛はあるのか〜 制作:海老原伸江(2003年度卒業)
エディプス・コンプレックスとは子供が親に対して抱く愛、及び憎悪の欲望の組織的相対を表す精神分析用語である。フロイトはかつて「すべての人間にエディプス・コンプレックスを克服するという仕事が課せられている」と言った。愛すこと、愛されるということから生じる誤解と劣等感の解決策を、親子という最小でかつ絶対的な関係から見い出し、映像インスタレーションとしてまとめた。
母親が描く完璧な子供像ぬいぐるみの集合体でつくられた大きなぬいぐるみ“あの子”は子供を象徴している。
“あの子”の頭の中に液晶モニターをしこみ目の所から覗いて中の映像を見るという形をとっている。この作品は離れてみていてもこの子が何を思っているかもわからず、興味を持って覗き込んでみた所ではじめて映像が見えてくるようにして、一方通行では何もわかりあえないという人間の関係性を見せ方にも取り入れた。
映像は育児放棄やキレる子供など現代の社会問題とおりまぜて、すれ違う親子関係をテーマに、皮肉を交えながら実写とアニメーションの合成で人間のコミュニケーションには何が必要なのかを提案した。子供役をぬいぐるみが、母親役を私が演じている。また、親子の対立も戦争も、個人と国の違いを除けばシステム的には一緒であり、幾つかの背景や因果関係の中で、ある部分的なストレスや野望等が長い時間をかけて誤解と主張を繰り返し、複雑にもつれ合った結果として生じたものである。作品の中心に永遠の子供像“あの子”という得意なキャラクターを置くことによって人間たちの愚かさ、グロテスクさを浮かび上がらせ、自分自身の気持ちと現在の社会情勢に対する反体制的テーマを一致させた。